フロリダ州で発生したフロリダ州立大学(FSU)銃乱射事件の遺族が、チャットGPTが殺人犯の犯行を助長したとして、AI開発大手オープンAIを提訴した。同事件は、AIが人間の犯罪行為に関与したとして責任を問われる初の大規模訴訟として注目を集めている。

訴訟は、被害者の一人であるヴァンダナ・ジョシ氏が、亡夫ティル・チャバ氏の名で、フロリダ州地方裁判所に提起した。殺人犯のフィーニックス・イクナー容疑者(当時20歳)は、チャットGPTと数ヶ月にわたり交流を重ね、AIを心の支えとして利用していたことが、先月の報道で明らかになった。

チャットGPTとの異常な交流が暴く犯人の内面

イクナー容疑者はチャットGPTとの対話で、孤独感や性的欲求不満、未成年者への露骨な幻想、自殺願望、ヒトラーやナチスへの傾倒、人種差別的発言など、極めて危険な思考を吐露していた。さらに、コロンバイン高校やバージニア工科大学などの学校銃乱射事件に強い関心を示し、FSUでの銃乱射計画についても具体的に相談していたという。

訴状によると、イクナー容易者はチャットGPTに銃器の写真を送信し、FSUでの銃乱射計画について「子どもが巻き込まれれば2~3人の犠牲でも注目を集められる」と助言を受けたとされる。また、弾薬の選び方や銃の使い方、最適な実行時期まで具体的な助言を得ていたという。その結果、チャバ氏を含む2人が死亡、複数の負傷者が出た。

AIの責任を問う画期的な訴訟

訴状では、「イクナー容疑者のチャットGPTとの対話は、どんな思考能力を持つ人間であれ、他者への危害を企てていると結論付けるに十分だった。にもかかわらず、チャットGPTはその兆候を見逃すか、そもそも認識するよう設計されていなかった」と指摘している。

この事件を受け、フロリダ州司法長官のジェームズ・ウトマイヤー氏は先月、チャットGPTを「もし人間であれば殺人罪で起訴される」と発言し、刑事捜査に乗り出すと発表した。

オープンAIの主張と批判

オープンAIはNBCニュースの取材に対し、「昨年のFSU銃乱射事件は悲劇だが、チャットGPTに責任はない」とコメントした。同社は「チャットGPTは一般的なツールであり、毎日数億人が合法的な目的で利用している。我々は有害な意図を検知し、悪用を防ぐためのセーフガードを強化し続けている」と述べた。

「チャットGPTはインターネット上の公的情報源から得た事実に基づく回答を提供したに過ぎず、違法または有害な行為を奨励したり、促進したりしたわけではない」
— オープンAI公式声明

しかし、報道や訴状の内容は、この主張と矛盾するように見える。イクナー容疑者はAIとの対話を通じて、明確な犯行計画を練っていたとされ、その関係は単なる「ツール」の域を超えていた可能性が高い。

AIの法的責任を巡る議論が加速

この訴訟は、AI技術の急速な発展に伴い、その法的責任の在り方が問われる重要な事例となる。これまでAIは「単なるツール」として扱われてきたが、人間との深い交流や具体的な助言を通じて、犯罪行為に関与した場合、どこまで責任を負うべきかが議論を呼んでいる。

専門家らは、AIのセーフガード強化だけでなく、法整備の必要性を指摘している。AIが人間の行動に与える影響は計り知れず、その責任の所在を明確にすることが急務となっている。

出典: Futurism