米国で、78歳の男性が6カ月にわたり全身に黒色の壊死病変と深い潰瘍が広がり、医師を困惑させる事例が発生した。顔面は黒色の痂皮で覆われ、左眼瞼は壊死により破壊され、口蓋と鼻腔を貫く穴まで形成された。米イェール大学医学部の報告によると、原因は「アカントアメーバ」という自由生活性アメーバで、通常の生活環境下でも存在する可能性があるが、感染が進行した時点で既に手遅れだったという。

同症例は、学術誌「Emerging Infectious Diseases」に報告された。同誌には、患者の画像が掲載されているが、閲覧には注意が必要だ。

アカントアメーバ感染症とは

アカントアメーバは、土壌や水中など自然環境に広く生息する自由生活性アメーバの一種で、通常は無害だが、免疫力が低下した患者に感染すると重篤な病態を引き起こす。特に、HIV/AIDS、がん、糖尿病患者や、臓器移植後の免疫抑制剤服用者に多く見られる。

しかし、今回の78歳男性は、これらのリスク要因を有していなかった。このため、医師らは当初、原因の特定に苦慮したという。

進行が早すぎた感染

アカントアメーバ感染症は、進行が非常に速く、放置すると全身に壊死が広がる。特に、眼球や脳、皮膚、肺などに感染が及ぶと致命的なケースが多い。米疾病対策センター(CDC)によると、同感染症の死亡率は約90%と報告されている。

今回の症例では、患者がイェール大学医学部病院に転院し、高度な医療を受けた時点で既に全身に壊死が進行していた。このため、治療は対症療法にとどまり、最終的に患者は死亡した。

アカントアメーバ感染の予防と対策

  • 免疫力が低下している人は注意が必要:HIV/AIDS、がん、糖尿病患者や免疫抑制剤を服用中の人は、特に感染リスクが高まる。
  • 衛生管理の徹底:コンタクトレンズの使用時は、適切な消毒と取り扱いが重要。また、水道水の使用には注意が必要。
  • 早期発見・早期治療:皮膚や眼に異常を感じた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要。