イタリア・ミラノで開催された「ミラノデザイン週間2024」にて、サムスンは未来のデザインとAI(人工知能)に関する新たなビジョンを発表した。同社のチーフデザイン責任者、マウロ・ポルチーニ氏は、AIが生活のあらゆる場面に浸透する未来を提案し、その中心に「人間性」を据える重要性を強調した。

展示の中心となったのは、折りたたみスマートフォン「Galaxy Tri-Fold」と、ロボット型AIデバイス「Project Luna」だ。Project Lunaは、丸いディスプレイと首を回転させる機能を持ち、まるで映画『ウォーリー』に登場するロボットのような愛らしい外観と、HAL 9000の光輪を思わせるグラフィックで注目を集めた。会場では、このデバイスが orchestra(オーケストラ)の指揮を執る演出が行われ、AIが家庭内の様々なデバイスを統合する未来像が示された。

AI時代のUXデザイン:個から共同へ

ポルチーニ氏は、サムスンが目指すAIの未来像について、「個人のAIデバイスから、家庭全体に広がる共同AIへの移行」と語った。例えば、テレビや冷蔵庫などの家電がAIを搭載し、まるでハリー・ポッターの世界のように、瞬時に機能を切り替えることが可能になるという。同氏は、「AIは避けられない技術だが、その方向性を決めるのは人間の倫理観と創造性だ」と強調した。

「Project Luna」の役割と家庭内AIの未来

Project Lunaは、家庭内でAIが不在の際に補完的な役割を果たす「専任AIコンパニオン」として設計されている。その外観は、2010年代にMITで開発されたロボット「Jibo」に似ており、親しみやすさと機能性を兼ね備えている。また、展示では、アナログとデジタルが融合したプロダクトも紹介された。例えば、レコードプレーヤーのようなシンプルなスピーカーは、普段は静かに音楽を奏で、必要に応じてAI機能を発揮するという。

サムスンのデザイン哲学:「人間性」を軸に

ポルチーニ氏は、サムスンのデザイン戦略について、「技術の進化だけでなく、人間の感情や倫理観を重視する」と語った。同氏は2023年にサムスンの初の外国人チーフデザイン責任者に就任し、グローバルな視点からデザインをリードしている。今回の展示は、そのビジョンの一端を示すものであり、今後数年以内に実用化される可能性の高いコンセプトが数多く含まれていた。

「AIは必ず来る。重要なのは、その方向性を人間が倫理的かつ創造的に導くことだ。私たちは、テクノロジーが人間を支援する道具であり続けるよう、デザインしなければならない」
— マウロ・ポルチーニ(サムスン チーフデザイン責任者)

展示から見える未来像

  • Galaxy Tri-Fold:折りたたみスマートフォン。携帯性と機能性を両立し、AIとのシームレスな連携を実現。
  • Project Luna:家庭内AIコンパニオン。丸いディスプレイと首を回転させる機能で、ユーザーとのインタラクションを重視。
  • 家電とAIの融合:テレビ、冷蔵庫、スピーカーなど、あらゆる家電がAIを搭載し、生活空間全体で機能する未来を提案。
  • アナログとデジタルの共存:レコードプレーヤーのようなアナログ要素を取り入れたプロダクトが、AI時代の新たな価値を生み出す。

サムスンの今回の展示は、単なるテクノロジーの紹介にとどまらず、AIが人間の生活にどのように溶け込んでいくかを具体的に示すものとなった。ポルチーニ氏の言葉を借りれば、「デザインとは愛の行為」であり、その根底には常に人間への愛情がある。今後、サムスンがどのようにこのビジョンを具現化していくのか、注目が集まる。