ローマ法王レオ14世は14日、欧州最大の大学であるローマ・ラ・サピエンツァ大学を訪れ、演説で人工知能(AI)技術や高性能兵器への投資が世界を「滅亡のスパイラル」に導くと強く非難した。同時に、中東とウクライナの和平を訴えた。
同大学を法王が訪れるのは、2008年に教皇ベネディクト16世が学内の抗議を受けて演説を中止して以来、初めてのこと。レオ14世は当日、同大学の学生らから温かい歓迎を受けた。特に注目されたのは、イスラエルとハマスの戦争が続くガザ地区から「人道回廊」でイタリアに到着したばかりの若いパレスチナ人留学生たちだ。イタリア政府とカトリック団体は2023年以降、ガザ戦争を受け、数百人のパレスチナ人にイタリアでの学業や医療を提供してきた。
法王は同大学のチャペルで留学生と短時間面会し、その後、1303年に教皇ボニファティウス8世によって設立された同大学のメイン講堂で演説を行った。
軍事支出の拡大と教育・医療の犠牲
演説の中でレオ14世は、今年の軍事支出が特に欧州で急増し、教育や医療への投資が犠牲になっていると指摘。「一般市民の福祉を顧みない特権層の富をさらに肥大化させている」と述べた。
また、AIの軍事・民生利用について「人間の責任を免除し、紛争の悲劇を悪化させる可能性がある」として、その開発と使用の監視強化を求めた。
「ウクライナ、ガザ、パレスチナ地区、レバノン、イランで起きていることは、戦争と新技術の関係が非人間的な進化を遂げ、滅亡のスパイラルに陥っていることを示している」
法王は教育と研究が「平和と正義を求める人々の命」を重視する方向に転換すべきだと強調した。
AIの倫理的課題と初の回勅に向けて
レオ14世はAIを人類が直面する最も重要な課題の一つと位置づけ、特に戦争や日常生活におけるAIの応用について繰り返し言及。今後数週間以内に発表予定の初の回勅( encyclical)でもこれらのテーマを深く掘り下げる見込みだ。
ガザからの留学生との交流
19歳のナダ・ラヒム・ジョウダさんは、イタリア到着からわずか2日後に法王と面会した。ローマでのビジネス科学の学業に驚きと喜びを感じていると語る。
「ここはまるで天国のよう。灰色の街並みや困窮した人々がいない。すべてが緑で美しい」
しかしジョウダさんは、母親が白血病を患い、17歳と13歳の妹たちを残してきたことを案じている。ガザ戦争中、一家は4度の避難を余儀なくされ、母親はがんの治療や検査を受けられなかった。
「家族は全員が私を頼りにしている。私だけが希望の光なの」