AIの進化が仕事の未来を劇的に変えつつある中、LinkedInのリーダーたちは「タスク単位で仕事を捉える」ことの重要性を説く。新著「Open to Work: How to Get Ahead in the Age of AI」の共著者であるAneesh Raman(LinkedIn チーフ・エコノミック・オポチュニティ・オフィサー)とRyan Roslansky(LinkedIn CEO、Microsoft Office & Copilot EVP)は、AI時代にキャリアを切り拓くための具体的なアプローチを提案している。

Raman氏はカリフォルニア州経済戦略上級顧問やFacebookの経済インパクト責任者を歴任し、Roslansky氏はLinkedInを率いるだけでなく、Microsoftの幹部としても活躍する。二人は、AIが仕事に与える影響は「リアルタイムで進行中」であり、個人が主体的にキャリアを形成できる時代が到来したと指摘する。

「仕事は肩書きではなくタスクで考える」

従来、私たちは仕事を「肩書き」で定義してきた。会計士、看護師、マーケター、エンジニアなど、肩書きが自分の役割を示す指標だった。しかし、AI時代において肩書きはもはや有効な指標ではなく、AIは「肩書き」ではなく「タスク」を置き換えていくからだ。

Raman氏は、仕事を「タスクの集合体」として捉えることを提案する。まず、紙に「現在の仕事で最も時間を費やしている12のタスク」を書き出す。肩書きや目標、職務記述書ではなく、日々実際に行っている作業をリストアップする。次に、それらのタスクを3つのバケツに分類する。

  • バケツ1:AIが単独で実行可能なタスク
    例:データ入力、基礎的なリサーチ、会話を伴わないスケジューリングなど。
  • バケツ2:AIと共に実行するタスク
    例:AI分析を活用した戦略立案、AIツールを用いたクリエイティブ作業、市場調査に基づく問題解決など。多くの仕事はこのカテゴリに移行していく。
  • バケツ3:人間にしかできないタスク
    例:人間関係の構築、不確実性下でのリーダーシップ、困難な判断の実行など。感情を読み取る能力や信頼関係の構築が求められるタスクが該当する。

この3つのバケツを「コンベアベルト」に例え、Raman氏は「バケツ1のタスクはAIの進化とともに消滅していくが、その分、バケツ2の新たな機会が生まれる。バケツ2をマスターすれば、さらに深いバケツ3のタスクに取り組む時間と発想が生まれる」と説明する。

キャリアの未来を切り拓く3つのステップ

Raman氏は、タスクの移行を段階的に進めることを推奨する。

  1. バケツ1からバケツ2へ:AIを活用したタスクの高度化
    ルーティン作業に人間の判断を加えることで、単純なタスクから価値の高いタスクへと移行する。例えば、データ入力をAIで自動化し、その結果を分析して戦略に活かす。
  2. バケツ2のタスクをAIツールで効率化
    AIツールを活用してバケツ2のタスクを加速させ、その分バケツ3のタスクに注力する時間を確保する。クリエイティブ作業や問題解決にAIを活用し、人間ならではの価値創造に集中する。
  3. バケツ3の能力を拡大:人間にしかできない価値の創造
    人間関係の構築、リーダーシップ、困難な判断など、AIが代替できない領域で専門性を高める。この領域こそが「持続可能な価値」を生み出す基盤となる。

Raman氏は「成功は、タスクをバケツ間で意図的に移行させることにかかっている」と述べ、個人が主体的にキャリアを形成する時代の到来を強調する。

AI時代のキャリア戦略:変化をチャンスに変える

「AIは仕事を奪うのではなく、仕事の在り方を変える。私たちがすべきは、AIが得意な領域と人間が得意な領域を明確に切り分け、それぞれの強みを最大限に活かすことだ」
— Aneesh Raman, LinkedIn チーフ・エコノミック・オポチュニティ・オフィサー

Roslansky氏も「LinkedInのデータによると、AI関連スキルを持つ人材の需要は急速に高まっている。しかし、それだけでなく、人間性や創造性、リーダーシップといったソフトスキルがますます重要になっている」と指摘する。同社の調査では、AI時代に求められるスキルとして「コミュニケーション能力」「問題解決能力」「変化への適応力」が上位にランクされている。

二人は、AI時代のキャリア戦略として「学び続けること」の重要性も強調する。AIが進化する中で、個人がキャリアを切り拓くためには、常に新しいスキルを習得し、タスクのバケツを再構築する柔軟性が求められる。

新著「Open to Work」は、AI時代におけるキャリア戦略の羅針盤となる一冊だ。Raman氏による音声版も「Next Big Idea」アプリで聴くことができる。