Dropbox、ハイブリッド勤務を「最悪」と否定

多くの企業が出社義務(RTO)を巡って従業員と対立する中、Dropboxは完全リモートモデルを貫き、議論の渦中から距離を置いている。同社の最高人事責任者(CPO)であるメラニー・ローゼンワッサー氏はAP通信の取材に対し、「パンデミックは、対面でこそ生産的になれるという私たちの前提を揺るがせました」と語った。

「バーチャルファースト」を貫く理由

Dropboxはパンデミック中に完全リモートモデルを導入し、その後も「バーチャルファースト」の方針を維持してきた。同社は世界約2,100人の従業員に対し、世界中のどこからでも勤務を認めている。サンフランシスコに本社を置く同社は、他社が出社を義務化する中でも、このモデルを堅持している。

ローゼンワッサー氏は「多くの業界で出社が義務化される中、私たちがこの姿勢を維持することがいかに重要かを実感しています」と述べ、同社のリモートモデルの意義を強調した。

ミーティングは「3Dルール」で効率化

Dropboxでは、意思決定のほとんどが非同期で行われ、文書を通じたコミュニケーションが中心だ。同社は「コア・コラボレーション・アワー」と呼ばれる4時間の時間帯を設け、ミーティングはこの時間帯に集中させている。時間帯は従業員の居住地に応じて調整される。

ローゼンワッサー氏は「私たちは『3D』と呼んでいます。ディスカッション(議論)、デベイト(討論)、デシジョン(決定)のいずれかがなければ、ミーティングは必要ありません」と説明した。これにより、無駄なミーティングを削減し、効率的な業務を実現している。

それ以外の時間は、従業員が自分の好みに合わせて勤務時間を調整できる。この「バーチャルファースト」モデルにより、同社はグローバルな人材確保に成功している。

ローゼンワッサー氏は「私たちはハイブリッドを明確に否定しています。ハイブリッドは『最悪の選択肢』です。従業員は長時間の通勤を強いられ、それでも大半の同僚がリモートで仕事をしているため、Zoomで会議に参加するだけという状況に陥ります。私たちは、公平な競争環境を作り出すことに信念を持っています」と語った。

リモート勤務の課題と対策

一方で、リモート勤務には課題もある。例えば、燃え尽き症候群(バーンアウト)やワークライフバランスの境界線の曖昧さだ。ローゼンワッサー氏は「自宅で仕事をすると、プライベートと仕事の境界が曖昧になります。だからこそ、従業員の好みに応じた非線形の勤務時間を意図的に導入しています」と述べた。

また、リモート勤務者は運動不足に陥りやすい。Dropboxは「Meet Move」というプログラムを導入し、ミーティング中に歩くことで運動不足を解消する取り組みを始めた。このプログラムでは、屋外や自宅で歩きながらミーティングに参加できる。

社内コミュニティの醸成

リモート勤務でも社内のコミュニティを維持するため、Dropboxは新入社員に「オンボーディング・バディ」を割り当て、チームごとに月間イベントを開催している。これにより、従業員同士のつながりを強化している。

従業員の評価と今後の展望

調査会社グラスドアによると、Dropboxの従業員の69%が友人に同社での勤務を勧めたいと回答している。リモート勤務を採用する企業が減少する中、Dropboxの「バーチャルファースト」モデルは、オフィス勤務を望まない従業員にとって魅力的な選択肢となっている。

ローゼンワッサー氏は「9時から5時までオフィスで過ごす生活に戻りたくない従業員にとって、Dropboxは理想的な職場かもしれません」と語った。

「ハイブリッドは最悪の選択肢。公平な競争環境を作り出すことが私たちの信念です」
— メラニー・ローゼンワッサー(Dropbox CPO)