AI起用を明確に禁止、演技賞と脚本賞の新基準

アカデミー賞を主催する米国映画芸術科学アカデミーは、99回目の授賞式に向けた新ルールを発表した。その中で最も注目を集めたのが、AIの関与に関する厳格な制限だ。

新ルールでは、演技賞部門について「人間による演技で、本人の同意を得たものに限る」と明記。脚本賞部門では「人間が執筆したものでなければならない」と定められた。さらに、出品資格の審査過程で「人間による創作の詳細な説明を求める権利を留保する」とも発表した。これは、AIが演技や脚本に関与した作品の排除を強く示唆する内容となっている。

俳優の多重ノミネートが解禁に

演技賞部門では、同一カテゴリー内での複数ノミネートが可能になった。従来のルールでは、同一俳優が同一カテゴリーで2つのノミネート資格を獲得した場合、得票数の多い方の作品のみがノミネート対象となっていた。しかし、新ルールにより、他の主要部門と同様に、複数の演技でノミネートされる道が開かれた。

同一年に同一カテゴリーで2つのノミネートを獲得した例は稀だが、過去にはスカーレット・ヨハンソンが2019年に主演女優賞と助演女優賞でノミネートされたケースがある。ただし、これまでの例では、いずれかは主演、いずれかは助演という組み合わせに限られていた(バリー・フィッツジェラルドは1945年に主演と助演の両方でノミネートされたが、現在はそのような重複はルールで禁じられている)。

国際長編映画賞、選考ルールを大幅刷新

国際長編映画賞(旧外国語映画賞)では、「一国一作品」の長年のルールが廃止され、新たな選考方法が導入された。従来は各国が公式に推薦した1作品のみが出品資格を有していたが、今後は以下の2つの条件のいずれかに該当すれば出品が可能となる。

  • 各国の公式推薦を受ける
  • 主要6つの国際映画祭で最優秀賞を獲得する

対象となる映画祭は、ベルリン国際映画祭、釜山国際映画祭、カンヌ国際映画祭、サンダンス映画祭(ワールドシネマ部門グランプリ)、トロント国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭の6つ。これにより、各国の公式推薦を受けられなかった優れた作品も、映画祭での受賞を通じて出品資格を獲得できるようになる。

例えば、過去にカンヌパルムドールを受賞した「アナトミー・オブ・ア・フォール」や「タイタン」は、各国の公式推薦がなくても出品資格を得られた可能性がある。同様に、ヴェネツィア金獅子賞受賞作「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」や「ハプニング」、ベルリン金熊賞受賞作「イエロー・レターズ」や「ドリームズ(セックス・ラブ)」、釜山映画祭グランプリ受賞作「グローミング・イン・ルオモ」、トロント映画祭観客賞受賞作「トゥ・ザ・ヴィクトリー」や「ゼイ・ウィル・ビー・ダスト」、サンダンス映画祭ワールドシネマ部門グランプリ受賞作「シェイム・アンド・マネー」や「キャクタス・ピアーズ」なども対象となる。

アカデミー側は、このルール変更により、年間4〜5作品ほど出品資格を得る作品が増加すると見込んでいる。

新ルールの背景と今後の影響

今回のルール改正は、AI技術の急速な進展と国際的な映画産業の多様化に対応するものだ。特にAIによる演技や脚本の自動生成が広がる中、アカデミー賞が「人間の創造性」を重視する姿勢を明確に打ち出した形となった。

また、国際長編映画賞の選考ルール改正は、各国の公式推薦に依存しない、より公平な選考プロセスの実現を目指したものだ。これにより、これまで各国の政治的・文化的な判断によって排除されていた優れた作品が、国際的な舞台で評価される機会が広がることが期待される。

99回目のアカデミー賞授賞式は、2027年3月に開催される予定。新ルールが実際の受賞作にどのような影響を与えるのか、注目を集めそうだ。

出典: The Wrap