テキサス州の自由化された電力市場では、消費者は電力会社、料金プラン(固定か変動か)、契約期間などを選択できる幅広い選択肢を持っている。さらに家庭用バッテリーを導入するとなると、その選択肢は一層複雑になる。電力会社、設置業者、契約業者との調整が必要となるためだ。
そんな中、10月23日、米国の家庭用バッテリー製造・VPP(仮想発電所)プロバイダーであるLunar Energyと、英国最大手の小売電力会社Octopus Energyが提携し、テキサス州の消費者に向けた新たなソリューションを発表した。家庭用バッテリーと固定料金プラン、さらにVPPへの自動参加をパッケージ化した「ワンストップ」の電力サービスだ。
このプランの特徴は、電力料金、物理的なバッテリー、VPPへの参加を1つの契約にまとめている点にある。また、Octopus Energyにとっては、米国で太陽光発電設備を持たない顧客向けに、家庭用バッテリー単体での提供を開始する初めての事例となる。
「バッテリーの価格低下とデータセンター需要の高まりを背景に、テキサス州(そして米国全体)が家庭用バッテリーの大規模導入に適した市場であると確信するに至りました」と、Octopus Energy米国法人のCEOであるニック・チャセット氏は語る。
Octopus Energyは既にテキサス州で複数の小売電力プランを提供しており、州内の多くの地域で消費者が電力会社を自由に選択できる環境を整えている。こうした競争環境が、新たなサービスモデルの導入に適した土壌となっている。
新プランに参加する顧客は、初期費用なしで月額45ドルでLunar Energy製のバッテリーをリースでき、10年のリース期間終了後にシステムを購入するオプションも付帯する。このサービスは、屋根置き太陽光発電システムの有無や、既存のOctopus Energy顧客かどうかに関わらず、テキサス州の全ての電力利用者が対象となる。
当初はLunar Energyがバッテリー機器とVPPソフトウェアを提供するが、チャセット氏によると、今後のパートナーシップの拡大に伴い、「適切なソフトウェアプラットフォームについて議論が進む」としている。Octopus Energyのプラットフォームと子会社Kraken Technologiesは、世界最大規模の住宅用資産を活用したVPPを運営している実績がある。
このVPPでは、バッテリーの充電スケジュールを最適化し、電力価格が安い時間帯に充電してピーク需要時に放電することで、化石燃料を使用するピーク発電所の代替となるクリーンでコスト効率の高いエネルギー供給を実現する。Octopus Energyによると、こうしたエネルギーアービトラージ(価格差を利用した収益機会)の恩恵は、3年間の固定料金契約を通じて顧客に還元されるという。
また、停電時にはバッテリーが最大で1日程度、家庭の照明や重要な家電製品に電力を供給することで、レジリエンス(強靭性)の向上も期待できる。チャセット氏は、このプランの最大の魅力の1つが「3年間という契約期間の長さ」だと指摘する。テキサス州では、多くの電力プランが1年未満の短期契約である中、3年という期間は消費者にとって大きな安心感をもたらす。