党派を超えた米国の住宅政策、実は気候変動対策の切り札だった
米国では現在、民主党と共和党が政策面でほとんど一致点を見出せない状況が続いている。しかし、唯一の例外が「住宅供給の拡大」だ。新たな住宅を建設すれば雇用が創出され経済が活性化するという経済的な観点、あるいは、住宅価格を抑制してホームレスを減らすという社会的な観点から、双方の政党がこの政策を支持している。
ところが、この住宅政策が実は「気候変動対策」としても極めて有効であることが、最新の調査で明らかになった。米国の新築集合住宅(アパートメント)の75%が電化されているという。つまり、太陽光パネルやクリーンエネルギーで稼働する電力網から電力を供給できるため、天然ガスを燃焼する暖房システムに比べて二酸化炭素排出量を大幅に削減できるのだ。
トランプ政権下でも進む集合住宅建設、気候変動対策に貢献
トランプ政権や共和党は気候変動対策の後退を図っている一方で、新たな住宅建設を推進する政策を打ち出している。例えば、共和党が強く支持するモンタナ州では、このほど集合住宅の建設を促進する複数の法案が可決された。専門家はこれを「気候変動対策の隠れたソリューション」と呼んでいる。
「アパートメントこそが、気候変動対策の隠れた解決策だ」と語るのは、シンクタンク「Sightline Institute」のエグゼクティブ・ディレクター、アラン・ダーニング氏だ。同団体が発表した調査レポートによると、集合住宅は単独世帯の住宅に比べて環境効率が極めて高いという。
なぜ集合住宅は環境に優しいのか?
- 断熱性の高さ:集合住宅は隣接する住戸と壁や床、天井を共有しているため、外気の影響を受けにくく、断熱性が高い。
- 面積の効率性:集合住宅の各戸は、一戸建てに比べて面積が小さいため、冷暖房にかかるエネルギーが少なくて済む。
- 電化の普及:集合住宅の建設業者は、配管工事が不要な電気式暖房(ベースボードヒーターなど)を導入することが多く、初期費用を抑えられる。
同レポートによれば、1970年代初頭以降に建設された集合住宅の68%が電気式暖房を採用しており、当時は気候変動対策を意識したものではなかったが、結果的に環境に優しい選択肢となった。現在では、集合住宅に住む人の60%が全電化されているという。
さらなる進化:ヒートポンプの普及
集合住宅は、さらに環境負荷を低減する可能性を秘めている。従来のガス暖房が熱を「発生」させるのに対し、ヒートポンプは外気から熱を「移動」させる技術だ。これにより、エネルギー効率が大幅に向上し、二酸化炭素排出量をさらに削減できる。
「集合住宅の建設業者にとって、電気式暖房は初期費用を抑える合理的な選択肢だ」と語るのは、気候変動ソリューション団体「Project Drawdown」の上級科学者、アマンダ・D・スミス氏だ。「賃貸物件を建設する際、ランニングコストよりも初期費用を重視する傾向があるため、電気式暖房や給湯器は経済的にも合理的な選択肢となる」という。
党派を超えた合意が生む未来の住宅政策
米国では、党派を超えた住宅政策が気候変動対策の一翼を担う可能性が見えてきた。単に住宅不足を解消するだけでなく、環境負荷の低減にも寄与する集合住宅の建設は、今後ますます重要性を増すだろう。
「集合住宅は、気候変動対策の隠れたスーパーパワーだ。党派を超えた政策が、このような意外な解決策を生み出すのだ」
— アラン・ダーニング(Sightline Institute エグゼクティブ・ディレクター)