米テスラは2022年に発表した電気トラック「テスラ セミ」の本格生産を、ネバダ州スパークスにある同社工場で開始した。当初は2019年の発売を目指していたが、度重なる延期を経て実現した。同車は従来の電気トラックと比較して、航続距離が2倍、充電時間が半分という性能を誇り、トラック業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。
カリフォルニア州で注目を集めるテスラ セミ
カリフォルニア州は米国最大の電気トラック市場であり、州内の重量級トラックからの排ガス削減が急務となっている。同州のHVIP(Hybrid and Zero-Emission Truck and Bus Voucher Incentive Project)プログラムでは、2025年12月に行われた最新の受付枠で、1,067件の補助金申請のうち965件がテスラ セミに集中した。これは他のトラックモデルを大きく上回る数字であり、2021年以降のHVIP全体の申請件数をも上回る規模だ。
国際クリーン交通評議会(ICCT)のレイ・ミンジャレス重量級車両プログラムディレクターは、「テスラ セミは従来メーカーのトラックと比較して、航続距離が2倍、充電時間が半分」と述べ、その優位性を強調した。また、全米のトラック販売台数の約3分の1を占める可能性があると指摘し、カリフォルニア州が掲げる「Advanced Clean Trucks規則」の目標(クラス8ゼロエミッション車10%)を大幅に上回る成果になるとしている。
排ガス削減と健康リスク軽減に期待
重量級トラックは輸送セクターの有害な大気汚染の半分以上を排出しており、特に低所得地域や有色人種コミュニティへの健康被害が深刻だ。テスラ セミの普及は、こうした環境負荷の軽減に大きく貢献すると期待されている。ミンジャレス氏は、「連邦政府による排出基準緩和の動きが続く中、州レベルで排ガス削減を推進するためには、車両価格の引き下げが重要」と指摘する。
「州は厳しい大気質の課題と気候目標を抱えており、この移行を実現するための代替パスを見つける必要がある。そのためには、車両の価格圧力をかけることが最も重要な手段の一つだ」
— レイ・ミンジャレス(ICCT重量級車両プログラムディレクター)
連邦政府の規制緩和と州の取り組み
昨年、米国議会の共和党議員は連邦大気浄化法に基づく排出基準設定権をカリフォルニア州から剥奪する法案を可決。トランプ政権も燃費基準の緩和や電気トラック・充電インフラへの連邦資金の回収を進めている。こうした政策的逆風の中、州は独自の取り組みで移行を加速させる必要に迫られている。
テスラ セミの本格生産開始は、こうした課題に対する一つの解決策となる可能性が高い。同車のコスト競争力と性能の高さが、トラック業界全体の電動化を後押しし、カリフォルニア州のみならず全米の排ガス削減に寄与すると期待されている。