米司法省(DOJ)は、ドナルド・トランプ前大統領が内国歳入庁(IRS)を相手取って起こした訴訟について、和解による解決を検討している。和解が成立すれば、約100億ドルの納税者資金がトランプ氏のもとに直接流れ込む可能性があることが、ニューヨーク・タイムズの報道で明らかになった。同紙は3人の関係筋の証言を引用している。

トランプ氏は2024年1月、自身と2人の息子がIRSを提訴。IRSが政府系請負業者を通じて機密の納税記録をメディアに漏洩させたと主張した。しかし、トランプ氏はIRSを監督する立場にあり、利益相反が指摘されている。ニューヨーク・タイムズは「訴訟は双方が対立当事者でなければ成立しないため、裁判官が却下する可能性がある」と指摘した。

さらに、DOJはトランプ氏の元私人弁護士が率いており、司法の独立性にも疑問が呈されている。和解が成立すれば、トランプ氏の財務調査が困難になる可能性もある。具体的には、100億ドルの支払いに加え、IRSがトランプ氏一家と関連企業の全ての税務監査を中止するという条件が検討されているという。

先月には、民主党議員が「大統領や副大統領、その家族が政府から和解金を受け取ることを禁じる法案」を提出。エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党・マサチューセッツ州)は「米国民が生活費の高騰に苦しむ中、トランプ氏は納税者の金を奪い、個人的なしっぺ返しに利用しようとしている」と批判した。

これはトランプ氏が司法省を利用して利益を得ようとした初めてのケースではない。2025年10月には、連邦捜査官がマーアラゴ・クラブに持ち込まれた機密文書を押収した件や、ロシア疑惑に関連した捜査に対し、司法省に2億3000万ドルの損害賠償を求める動きがあった。当時トランプ氏は「自分にお金を払う判断を下すなんて、奇妙な話だ」とコメントしていた。