米国時間6月13日に公開された伝記映画「マイケル」が、世界興行収入2億1700万ドル(国内9700万ドルを含む)を記録し、伝記映画史上最高のオープニング記録を樹立した。この記録は、インフレ調整前の数値としても、83の国・地域で公開された中で64の市場で最高記録となった。

これまでの伝記映画の世界最高記録は、2023年7月に公開されたクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」(1億7400万ドル)が保持していた。また、国内の伝記映画記録は、2015年1月に公開されたクリント・イーストウッド監督の「アメリカン・スナイパー」(9010万ドル)が保持していた。

「マイケル」の成功は、マイケル・ジャクソンの遺族と関係者が長年語ってきた「数百万人の観客に届く使命」を果たした形となった。しかし、批評家からの評価は厳しく、マイケル・ジャクソン役を演じたジャファー・ジャクソンの演技は評価されたものの、それ以外の点では高い評価を得られなかった。

その一方で、観客からの支持は圧倒的だった。CinemaScoreではA-評価を獲得し、Rotten Tomatoesの観客スコアは97%、PostTrakの調査でも90%の高評価を獲得した。

批評家と観客の評価の違いが浮き彫りに

「マイケル」の公開は、批評家の否定的なレビューの大半と同時に行われた。批評家たちは、ジャファー・ジャクソンの演技には一定の評価を与えたものの、映画全体に対しては厳しい見方を示した。

その一方で、観客は映画に熱狂した。その理由の一つとして、マイケル・ジャクソンの全楽曲が映画内で使用されたことが挙げられる。これにより、 TikTokやYouTubeでは観客が映画を観ながら歌ったり踊ったりする動画が多数投稿され、話題を呼んだ。

音楽伝記映画の成功要因とは

「マイケル」の成功は、音楽伝記映画の成功要因を改めて浮き彫りにした。批評家と観客の評価が大きく異なる中で、観客の支持を得るための鍵は「ヒット曲の使用」にあることが明らかになった。

例えば、フレディ・マーキュリーの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年)は、マーキュリーのセクシュアリティやエイズとの闘いを軽視したとして批評家から厳しい評価を受けた。しかし、クイーンのヒット曲を多数使用したことで観客から圧倒的な支持を得て、世界興行収入9億1000万ドルを記録し、4つのアカデミー賞を獲得した。

「マイケル」も同様に、マイケル・ジャクソンの全楽曲を使用したことで観客の共感を呼び、記録的な興行収入を達成した。

製作過程の困難とその影響

「マイケル」の製作過程は、困難を極めた。マイケル・ジャクソンの1993年の性的虐待告訴に関する和解条項により、映画内で告訴人に言及することが禁じられていたため、当初の脚本では重要な役割を果たしていた告訴に関するシーンが全てカットされた。これにより、映画の第三幕は大幅に変更を余儀なくされた。

しかし、この変更が観客の支持を得ることに影響を与えることはなかった。観客は、マイケル・ジャクソンの音楽とパフォーマンスに魅了され、映画に熱狂した。

今後の展望と市場の変化

「マイケル」は、来週公開予定の「プラダを着た悪魔2」と観客層が重なるものの、最近の「スーパーマリオギャラクシー」や「HAIL MARY プロジェクト」の成功からも分かるように、観客の映画館離れが進む中で、複数の大ヒット作を同時に支える市場の余力が回復しつつあることが示唆されている。

「マイケル」の成功は、批評家と観客、そして遺族や権利者の間で求められるものが大きく異なる音楽伝記映画の世界において、観客の支持を得るための基本的な要素が「ヒット曲の使用」であることを改めて示した。

出典: The Wrap