自動車業界では3D可視化ツールやVR彫刻プラットフォームが普及しつつあるものの、新型車の多くは今なおスケッチからスタートする。そのスケッチは、立体的な3Dモデルへと変換される前に、あらゆる角度から無数の反復と洗練を経なければならない。中にはデジタルの世界で消え去るものもあれば、粘土で立体化され、ラインやプロファイルをより具体的に可視化されるものもある。

このプロセスは、デザインと開発の始まりに過ぎない。多くの場合、実車が販売されるまでに5年以上を要し、今夏デビューする新型車の多くは、2020年から2021年にかけてスケッチが描かれたものだ。当時は代替燃料への移行を促す政策が活発化していた時期でもあった。

AIが描くクルマの未来

しかし、AI技術の進化により、このプロセスは劇的に変化しつつある。AIが生成したデザイン案を基に、人間のデザイナーが最終的な形を練り上げる「共同創造」の時代が到来しているのだ。例えば、米国のスタートアップ企業であるDesign Worldは、AIを活用して車両の外観デザインを短期間で複数提案するシステムを開発した。これにより、従来の手作業によるスケッチや粘土モデルの工程を大幅に短縮できる可能性が示されている。

AIデザインのメリットと課題

AIを活用したデザインプロセスには、主に以下のようなメリットがある。

  • スピード向上:数週間で複数のデザイン案を生成し、迅速な意思決定が可能
  • コスト削減:粘土モデルや物理的な試作にかかる費用を削減
  • 多様性の拡大:従来の人間中心の発想にとらわれない斬新なデザインの提案

その一方で、課題も存在する。

  • 人間の感性の再現:AIが生成したデザインが、人間の感情やブランドイメージに合致するかどうかの判断が難しい
  • 倫理的な問題:AIが学習したデータに偏りがある場合、デザインにバイアスが生じる可能性
  • 知的財産権:AIが生成したデザインの著作権帰属が不明確

実用化に向けた動き

既に一部の自動車メーカーでは、AIを活用したデザインプロセスの導入が進んでいる。例えば、ドイツのBMWは、AIを用いて車両の外観デザインを最適化するシステムを開発中だ。また、米国のGeneral Motorsは、AIが生成したデザインを基に、人間のデザイナーが最終的な形を決定する「AIアシストデザイン」を採用している。

これらの取り組みは、自動車デザインの未来を大きく変える可能性を秘めている。しかし、AIが完全に人間のデザイナーに取って代わることは当面ないだろう。むしろ、AIと人間のデザイナーが協力し、より革新的で魅力的なクルマを生み出す時代が到来するのだ。

出典: The Verge