自動車業界は常に「アナログな運転の楽しさ」と「デジタルな洗練」の狭間で揺れ動いている。その中で、BMWはこの相反する価値観の最前線に立つメーカーの一つだ。同社はかつて、クラッチ操作とギアシフトの自由を謳いながらも、その理由を十分に説明できないまま、重量級のM5を投入した。そんなBMWが送り出す、Mバッジを持たない5シリーズの最上位モデル「550e xDrive」を試乗した。これは客観的には非常に洗練され、精巧に設計された高級セダンであり、アウトバーンを快適に巡るドイツ車らしい存在だ。しかし、筆者はこの車を「好きだが、もっと好きになれなかった」と感じた。その理由は、至るところで感じる「わずらわしさ」にあった。
基本スペックと価格
BMW 550e xDriveの価格は73,400ドル(約1,100万円)からスタートし、5シリーズのラインナップでは530i(2.0L直列4気筒ターボ)と540i(3.0L直列6気筒ターボB58エンジン)の上位に位置する。550eは、540iの309馬力に加えて電気モーターを搭載し、計483馬力・516lb-ft(約699Nm)のトルクを発揮する。プラグインハイブリッド車であり、BMWはEV走行距離を33マイル(約53km)と公称するが、実際の試乗では40マイル(約64km)を超える実力を確認した。
外観デザイン:古さが目立つ現行モデル
550e xDriveの外観は、2023年にデビューしたG60型5シリーズの特徴を引き継いでいる。しかし、筆者はこのデザインが「やや古臭い」と感じた。G60型は、BMWが次世代「Neue Klasse」のデザイン言語を模索していた時期に発売されたため、その移行期の影響を受けている。確かに、3シリーズのような鼻先の突起はないが、それでも全体的なプロポーションは「太く、重厚」に感じられる。長いボンネットとCピラーからトランクまでのラインは悪くはないが、車体そのものの厚みをカバーする視覚的な工夫が不足している。
内装:洗練されているが、操作系に課題
内装については、後述する操作系の煩わしさが際立つ。BMWらしい高級感はあるものの、至るところに「わずらわしさ」が潜んでいる。例えば、運転モードの切り替えや、様々な機能へのアクセスに余計な手間がかかる。これは、高速道路や裏道を快適に走行しようとした際に、ストレスの原因となる。こうした「痛点」が、この車の評価を分ける要因となっている。
走行性能:強力なパワーと実用的なEV走行距離
550e xDriveのパワートレインは、直列6気筒エンジンと電気モーターの組み合わせにより、483馬力という高出力を実現している。このパワーは、アクセルを踏み込むたびにスムーズに伝わり、特に高速走行時の余裕を感じさせる。また、EV走行距離は公称値を上回る40マイル以上を記録し、日常の通勤や近距離の移動には十分な実用性を備えている。
総合評価:高級感とパフォーマンスのバランスに課題
BMW 550e xDriveは、高級セダンとしての洗練性と強力なパワーを両立している。しかし、操作系の煩わしさやデザインの古さが、その魅力を半減させている。筆者はこの車を「好きだが、もっと好きになれなかった」と評したが、それはBMWが目指す「運転の楽しさ」と「快適性」のバランスが、まだ完全には取れていないからかもしれない。次世代5シリーズでは、これらの課題がどのように解決されるのか、注目したい。
「BMW 550e xDriveは、高級感とパフォーマンスを兼ね備えた車だが、操作系のわずらわしさが残念な印象を与える。次世代モデルでの改善に期待したい。」