2020年2月28日の深夜、米国疾病予防管理センター(CDC)の疫学者のもとに緊急の電話がかかってきた。

「シアトルに直ちに派遣する。明朝、ロイバルビルでチームと合流し、詳細を伝える」——この短いメッセージが、新型コロナウイルス感染拡大の最前線への第一歩となった。

CDCの「疾病サーベイランス・疫学調査官(EIS)」プログラムとは

CDCのEISプログラムは、1946年に設立された伝説の「病気探偵」育成プログラムだ。公衆衛生の第一線で活躍する専門家を2年間の研修で養成し、感染症の流行調査や対策立案を担う。その歴史は、米国のみならず世界の感染症対策の基盤を支えてきた。

75年の歴史を刻む功績

  • ポリオ根絶への貢献:1950年代からのポリオ撲滅キャンペーンで、EIS卒業生が世界各地でウイルスの封じ込めに尽力。
  • エボラ出血熱の封じ込め:2014年の西アフリカでの大流行時に、EIS卒業生が現地で感染拡大防止に貢献。
  • 新型インフルエンザ対策:2009年のH1N1パンデミックでは、迅速な疫学調査で被害の拡大を最小限に抑えた。
  • 新型コロナウイルス対応:2020年のパンデミックでは、EIS卒業生が米国内外で感染拡大の監視と対策を主導。

EISプログラムの特徴と意義

EISプログラムの最大の特徴は、実践的な研修にある。卒業生は、実際の感染症流行現場で即戦力として活躍するためのスキルを磨く。また、CDC内外の専門家とのネットワークを構築し、公衆衛生のグローバルな課題に対応する体制を整えている。

「EISプログラムは、公衆衛生の未来を担う人材を輩出し続けている。75年の歴史は、まさに感染症との戦いの記録そのものだ」
— CDC前所長 ジェフリー・コプラン博士

今後の展望と課題

EISプログラムは、新たな感染症の脅威に対応するため、研修内容の見直しや技術革新を進めている。特に、人工知能やビッグデータを活用した疫学調査の高度化が注目されている。一方で、予算削減や人材不足といった課題も抱えており、今後の発展が注目される。

CDCのEISプログラムは、75周年を迎え、その伝統と革新を融合させながら、次なる100年に向けて歩みを進めている。

出典: STAT News