米国の風力発電産業は、トランプ政権による新たな規制戦略により、事実上の停滞状態に陥っている。再生可能エネルギー業界団体の米国クリーンエネルギー協会(ACP)によると、連邦政府が風力発電プロジェクトの承認プロセスを意図的に遅延させているという。
FAAの「危険物件」認定プロセスが停止
風力発電タービンなど高さ200フィート(約61メートル)を超える構造物は、連邦航空局(FAA)による「危険物件」認定が必要とされる。FAAは商業航空の安全を確保するため、この認定プロセスを担当しているが、トランプ政権下でそのプロセスが事実上凍結されている可能性が浮上している。
業界関係者によると、この問題は昨夏から顕在化していたが、当初は軍事レーダーへの影響が懸念されるプロジェクトに限定されていた。しかし、過去数週間で状況が悪化し、軍事施設から離れた場所にあるプロジェクトであっても承認が滞っているという。
国防総省がクリアランスを拒否
米国防総省は、FAAの「危険物件」認定プロセスに必要な承認を拒否している。これにより、風力発電プロジェクトの承認が事実上停止している状態だ。国防総省は、連邦法に基づく「立地クリアランスプロセス」を通じて、風力発電施設の設置に対する拒否権を行使できる立場にあるが、軍事的影響が見られないプロジェクトであっても承認が遅れているという。
あるエネルギー業界の弁護士は、FAAの問題について「産業を殺すための戦略だ。あらゆる法廷で敗北しても、投資が不可能な状況を作り出し、結果を待つ」と語った。また、元内務省職員でトランプ政権1期目にも在籍していたトニー・アイリッシュ氏も同様の見解を示し、「過去15カ月の最大の恥は、規則正しさの推定が失われたことだ」と述べた。
「合法的な抹殺」の手法か
これまでトランプ政権は、風力発電産業に対する様々な規制を試みたが、いずれも裁判で敗北していた。例えば、風力産業に対する大統領令1日目は違憲と判断され、風力発電所の操業停止命令も覆された。内務省による複数の規制も違法と裁定されている。しかし、今回のFAAを通じた規制戦略は、法廷での敗北を回避しつつ、産業そのものを事実上封殺することを狙ったものとみられる。
「これは産業を殺すための戦略だ。あらゆる法廷で敗北しても、投資が不可能な状況を作り出し、結果を待つ」
— 匿名のエネルギー業界弁護士
業界団体のACPは、この状況が風力発電産業全体に与える影響について深刻な懸念を示している。風力発電は米国の再生可能エネルギー戦略の中核を担う産業であり、その停滞は気候変動対策やエネルギー転換の遅れに直結する可能性がある。
今後の展望と業界の対応
風力発電業界は、今後どのようにこの規制の壁を乗り越えるのか注目されている。業界関係者は、FAAや国防総省との協議を進める一方で、法廷での対抗措置も検討している模様だ。しかし、トランプ政権の強硬な姿勢を考慮すると、早期の解決は難しいとの見方が強い。
米国の風力発電産業は、再生可能エネルギーの未来を左右する重要なセクターである。今回の規制戦略が産業全体に与える影響は計り知れず、今後の動向が注目される。