スタンドアップコメディのスペシャル番組といえば、これまで定番だったのは、舞台にコメディアンを立たせ、数台のカメラでそのパフォーマンスを収録するというシンプルなスタイルだった。しかし、Huluの新作スペシャル「グッド・ガール」でニコキ・グラーザを起用したプロデューサー陣は、この枠を超える演出に挑戦した。その背景には、グラーザのスター性と、ゴールデングローブの司会を務めるなどの活躍があった。

この変化は一朝一夕に起きたわけではない。グラーザは制作会社Done+Dustedとのタッグで、2024年5月に放送されたHBOスペシャル「Someday You’ll Die」を手掛けた。同社のエグゼクティブプロデューサーでパートナーのデイビッド・ジャミー氏は、この作品を「彼女のデビュー作であり、スターとしての覚醒を示した瞬間」と評価する。「彼女は、『自分は本当に優秀で、スターなんだ』と宣言したのです」と、TheWrapの取材に答えた。

その直前の2024年4月には、グラーザは「ザ・ロースト・オブ・トム・ブレイディ」に出演し、一躍注目を集めた。ジャミー氏は「彼女の知名度は急上昇し、世界中で注目される存在になった」と語る。こうした流れを受け、Done+Dustedのチームは「グッド・ガール」の制作にあたり、彼女の勢いを最大限に活かす方向で企画を練り直した。ゴールデングローブの司会をはじめとする連続したメディア露出も、その追い風となった。

ジャミー氏は「紙の上では、スタンドアップスペシャルの制作は非常にシンプルなプロセスです。しかし、私たちはこう考えたのです。『ポップスターのコンサートのように演出できないか? ストーリー性を持たせ、ビジュアル面でも工夫できないか』と」と振り返る。この発想の転換が、グラーザにとって大きな転機となった。

グラーザ自身も「多くのコメディアンは、スペシャル番組を自分のネタを披露する場としか見ていません。パッケージングにはほとんど関心を示さないのが普通です。怠惰なコメディアンにとっては、それが制作を簡単にする方法でもあります」と述べる。「しかしDone+Dustedとの仕事を通じて、私はこれまで多くの可能性を捨ててきたことに気づかされました」と続けた。彼女は、ジャミー氏とクリエイティブディレクターのクリス・コンビー氏の存在を、自身を「芸術家」として捉え直すきっかけになったと感謝している。「彼らは、『このスペシャルは何を伝えたいのか』『他の作品とどう違うのか』といった問いを投げかけてくれました。その結果、自分が単なるお笑い芸人ではなく、特別な作品を生み出すアーティストであることを再認識できたのです」と語った。

Done+Dustedは、この野心的なビジョンを実現するために、トップクラスのクリエイターを起用した。アカデミー賞受賞経験もあるプロダクションデザイナー、エリナ・ビリングスリー氏が、グラーザのパフォーマンスに合わせて変化する複雑な背景美術を手掛けた。また、グラミー賞やトニー賞の照明デザイナーとして知られるボビー・ディキンソン氏が、会場と自宅の視聴者双方にとって没入感のある演出を担当した。

グラーザのオープニングシーンは、彼女の大胆なキャラクターを象徴する演出となった。ビヨンセやテイラー・スウィフトのアリーナツアーにインスパイアされたこのシーンでは、グラーザが観客の前に「自作の応援ソング」に乗って、ステージ下から華々しく登場する。ジャミー氏は「オープニングはとにかく楽しんでもらいたいと思いました。まるでポップスターのように、ステージ下から登場するというアイデアです」と説明する。

出典: The Wrap