南極航海中のクルーズ船で、ハンタウイルス感染が疑われる集団感染が発生した。5月6日現在、3人の乗客が急性呼吸器疾患で死亡し、他の乗客や乗組員にも複数の感染疑い例が報告されている

通常、ハンタウイルスはげっ歯類から人間に感染するウイルスだが、今回の事例では船内で人から人への感染が起きた可能性が指摘されている。これは極めてまれなケースだが、公衆衛生当局が懸念を強めている。

ハンタウイルスとは?

ハンタウイルスは、主にネズミなどのげっ歯類が保有するウイルスで、その糞尿や唾液を介して人間に感染する。感染すると、「ハンタウイルス肺症候群(HPS)」と呼ばれる重篤な呼吸器疾患を引き起こす可能性がある。

米国疾病予防管理センター(CDC)によると、ハンタウイルスの致死率は38%に達することもあり、決して軽視できない感染症だ。

人から人への感染はあるのか?

一般的に、ハンタウイルスはげっ歯類から人間への感染が主流であり、人から人への感染は非常にまれとされてきた。しかし、今回のクルーズ船の事例では、感染者の密接な接触があった可能性が指摘されている

タフツ大学獣医学部感染症・グローバルヘルス学部の准教授、マリーケ・ローゼンバウム氏は、「人から人への感染が確認された事例は過去に数例しかない」と述べており、その可能性は低いものの、完全には否定できないとしている。

専門家が語る感染予防策

ローゼンバウム氏によると、ハンタウイルスの感染を防ぐためには、以下の対策が重要だという。

  • げっ歯類の排泄物や巣に触れない:特にキャンプ場や倉庫、船内の居住区など、ネズミが生息しやすい場所では注意が必要。
  • 清掃時のマスク着用:ネズミの糞尿が乾燥し、埃と共にウイルスが飛散する可能性があるため、掃除の際はN95マスクなどの防護具を使用する。
  • 手洗いの徹底:外出後や掃除後は、石鹸と流水で十分に手を洗う。
  • 船内の衛生管理:クルーズ船などの密閉空間では、ネズミの侵入を防ぐための徹底的な衛生管理が求められる。

今後の対応と注意喚起

公衆衛生当局は、今回の集団感染の原因究明と拡大防止に向けた調査を進めている。ハンタウイルスに対する一般市民の関心が高まる中、専門家は過剰な不安を煽るのではなく、正しい知識に基づいた予防策を講じることが重要だとしている。

今後も感染動向を注視するとともに、げっ歯類との接触機会が多い環境では、引き続き注意が必要だ。