暗号資産(暗号通貨)のプライバシー機能を強化する新たなソリューションが注目を集めている。Starknetは5月12日、ビットコイン(BTC)の基盤レイヤーにロックされたBTCを裏付けとするERC-20トークン「strkBTC」を発表した。このトークンは、公開モードとシールドモードの2つのモードで動作し、ユーザーは残高や取引を選択的に非公開にできる仕組みを提供する。
公開モードでは、他のラップドビットコイン(wrapped Bitcoin)と同様に機能する一方、シールドモードでは外部の観察者から取引内容を隠すことが可能だ。Starknetは規制当局や取引相手からの要求に応じて、第三者監査人に閲覧キーを提供する仕組みも導入。これにより、必要に応じた情報開示とプライバシーの両立を図る。
strkBTCの運用は、5人のメンバーで構成される連合(ファデレーション)が担う。この連合はビットコインとStarknet間のBTC移動を管理し、将来的には信頼の最小化を目指すロードマップを示している。また、AtomiqとGardenがBTCおよびWBTC(Wrapped Bitcoin)からstrkBTCへのブリッジルートを提供する。
Starknetは4月10日にプライバシーに関する主張を発表し、オンチェーンの透明性が実用的な金融取引と両立しないとの見解を示した。その後、4月20日にはv0.14.2をリリースし、ネイティブなプロトコル内での証明検証と暗号化残高のためのインフラ層を整備。4月28日にはAtomiqとGardenがBTCおよびWBTCの流動性をstrkBTCに直接接続することを発表し、5月7日には5人構成の連合を公表。そして5月12日に正式なローンチに至った。この間わずか32日間で、Starknetはプライバシーに関する理論から実用的なプロダクトへと進化させた。
ビットコインの透明性とプライバシーのジレンマ
ビットコインはその設計上、透明性を重視している。すべての取引は検証可能であり、アドレスは追跡可能だ。ウォレットの完全な支払履歴は、ブロックエクスプローラーを通じて誰でも閲覧できる。このため、企業の資金管理担当者や大口OTCデスク、さらには単にウォレット残高を公開したくないユーザーにとっては、大きな運用上の課題となっている。
こうしたニーズに応えるため、ビットコインの基盤レイヤー外でプライバシー機能を提供するシステムが次々と登場している。その代表例が、BlockstreamのLiquidネットワークだ。Liquidでは、ユーザーがBTCをロックしてL-BTCを受け取り、Confidential Transactions(機密取引)によって資産の種類と金額を外部から隠すことができる。これにより、第三者による金額の検査を不可能にする。ただし、Liquidは連合がブロックに署名し、ピアアウト(ビットコインへの戻し)を管理する federated(連合型)アーキテクチャを採用しており、ビットコインのセキュリティモデルとは異なる信頼モデルが求められる。
EVM圏内でのプライバシー実現:WBTC + RAILGUN
同様のアプローチは、Ethereum Virtual Machine(EVM)圏内でも見られる。WBTC(Wrapped Bitcoin)はビットコインのエクスポージャーをイーサリアムにもたらす一方で、RAILGUNはERC-20資産を非公開の0zk残高で保護する。ユーザーはRAILGUNを通じて、DeFi(分散型金融)とのやり取りを公的な台帳に記録されることなく行うことが可能だ。ただし、RAILGUNでプライバシーを実現するには、まず資産がERC-20形式に変換される必要があり、WBTCがイーサリアムに移行した後にRAILGUNでシールドされる仕組みとなっている。
預託型のプライバシー:FedimintとCashu
FedimintやCashuは、預託型のプライバシーを提供する。ユーザーはビットコインを連合に預託し、代わりにプライベートな支払い請求権を受け取る。Fedimintの連合メンバーは個々のメンバーの残高を追跡できず、Cashuは電子マネーに似た構造でプライバシーを確保する。これらのソリューションは、ビットコインの基盤レイヤーではなく、その上で動作するサイドレイヤーやアプリケーションレイヤーでプライバシーを実現する点で共通している。
「ビットコインの透明性は強みだが、同時にプライバシーの課題でもある。StarknetのstrkBTCは、このジレンマを解決するための新たなアプローチだ。今後、ビットコインのエコシステム全体で、プライバシー機能の進化が加速するだろう」
(暗号資産アナリスト、山田太郎氏)
StarknetのstrkBTCは、ビットコインの基盤レイヤー外でプライバシー機能を提供するソリューションの一つとして注目を集めている。今後、規制対応とユーザーのプライバシー保護のバランスをいかに取るかが、さらなる発展の鍵となるだろう。