アーティストが自らのライブ映画を共同監督するというクレジットは、特にジェームズ・キャメロンのような巨匠が技術面で支援し、3Dや高フレームレートといった最先端の演出を加える場合、自己顕示的な印象を与えかねない。しかし、ビルie・アイリッシュの新作ライブ映画「Hit Me Hard and Soft: The Tour (Live in 3D)」は、その共同監督という肩書を真に値する作品となっている。

単にビルie自身がカメラを手に取ったというだけでなく、彼女の音楽が持つ圧倒的な「親密さ」が、ライブ映像のあり方を根本から変えている。2016年のデビュー曲「Ocean Eyes」から2025年のグラミー賞ソング・オブ・ザ・イヤー受賞曲「Wildflower」まで、ビルieの代表曲が観客との一体感の中で披露される。観客は彼女の歌に合わせて声を合わせ、まるで一つの共同体のように融合する。この関係性こそが、ビルieの音楽が単に感情を表現するだけでなく、聴く者の存在そのものを肯定する力を持つゆえんである。

ビルieはツアーのたびに「パピールーム」を設け、バンドやスタッフがレスキュー犬と触れ合う時間を大切にしている。この一風変わった取り組みも、彼女の人間性を垣間見せるエピソードの一つだ。しかし、映像そのものは技術的にも芸術的にも高い完成度を誇る。ジェームズ・キャメロンが手がけた3D映像は、ビルieのパフォーマンスを鮮やかに捉え、モニターには多重化された映像が投影され、会場全体が鮮やかな色彩と光の束に包まれる。彼女の周囲にはまるで電気が走るかのようなエネルギーが漂い、観客の熱狂的な支持を象徴する光の輪が形成される。

これまでビルieの音楽を高く評価してきた一人だが、彼女のファンほどの熱狂的な情熱を持っていたわけではなかった。しかし、ライブの現場で彼女の歌声を聴くと、スタジオ録音とはまた違った迫力と一体感を感じた。スタジオではかすかにささやくような彼女のボーカルが、ライブでは力強く響き渡る。それでもなお、その本質は変わらない。ビルieの音楽が持つ「存在を肯定する力」は、ライブだからこそ最大限に発揮されるのだ。

ビルieはステージの上で、巨大な立方体の上から観客の前に現れる。その立方体はビデオフィードバックで輝き、彼女の存在感を際立たせる。この圧倒的なデビューシーンは、後に彼女がキャメロンとのインタビューで明かす深い思いとリンクしている。ライブでは「Lunch」「Bad Guy」「The Greatest」「Happier Than Ever」といった代表曲に加え、アカデミー賞受賞曲「What Was I Made For?」も披露される。ビルieは自己顕示的な態度を一切見せることなく、自身の作品がいかにファンの共感を呼び、文化的なメッセージを伝えているかを語る。例えば、彼女はファッションについても深いこだわりを持っている。ビルieは、色使いを洗練させたリムプ・ビズキットのフレッド・ダーストのようなスタイルを好み、後ろ向きの野球帽、自らのブランド「Hard and Soft」のスポーツジャージ、そして特製のエアジョーダン4と相まって、独自の世界観を築き上げている。

出典: The Wrap