暗号資産(暗号通貨)ネットワークを脅かす新たなリスクが現実のものとなりつつある。リップルは、同社が開発したXRP台帳を量子コンピュータに耐性を持たせるための包括的な計画を発表した。完全な移行完了は2028年を目標とし、その間に段階的に量子耐性技術を導入する方針だ。

リップルは11月12日、同社の公式発表で「量子コンピュータの脅威が理論的な段階から現実的なものへと急速に移行している」と認識を示した。同社は現在、既存のセキュリティシステムと並行して量子耐性技術のテストを実施しており、複数のパートナーと協力しながら開発を加速させている。

量子コンピュータの脅威とは

量子コンピュータは、従来のコンピュータでは不可能な速度で複雑な計算を実行できる次世代技術だ。特に、現在の暗号資産ネットワークで広く使用されている暗号化技術(楕円曲線暗号など)を短時間で解読する能力を持つとされる。グーグルの量子AI研究チームによる最近の研究では、十分に進化した量子コンピュータが現在のブロックチェーンの暗号化を破壊しうることが示唆されている。

現在のところ、量子コンピュータが暗号資産ネットワークを破壊する能力を持っているわけではないが、専門家らは「今すぐ収集し、後で解読する(harvest now, decrypt later)」戦略に警鐘を鳴らす。この戦略では、ハッカーが現在の公開データを収集し、将来的に量子コンピュータが成熟した段階で解読するというシナリオが想定されている。

リップルの4段階計画

  • 第1段階(現在進行中):米国立標準技術研究所(NIST)が推奨する量子耐性暗号のテストを実施。
  • 第2段階(2026年後半まで):テストネット上で量子耐性暗号と既存のセキュリティを並行運用。
  • 第3段階(2027年まで):メインネットで段階的な移行を開始。
  • 第4段階(2028年まで):完全な量子耐性ネットワークへの移行完了。

しかし、2028年までに量子コンピュータが既存のセキュリティを突破する可能性も否定できない。リップルはその場合に備え、緊急対応策としてXRPの古い署名方式の受け入れを停止し、ユーザーに対して資金を量子耐性のあるアカウントへ移動させる計画を発表している。

業界全体の動向

リップルの動きは、量子コンピュータの脅威が単なる理論にとどまらず、現実のものとなりつつあることを示す象徴的な出来事だ。他の主要な暗号資産ネットワークも同様の対策を進めている。

  • イーサリアム:イーサリアム財団は2029年までの完全移行を目指す4段階計画を発表。同財団の研究者らは、量子コンピュータが暗号学的に影響を及ぼすまでにはあと8〜12年かかると見積もりつつも、慎重を期して早期対策を進める方針。
  • ビットコイン:ビットコイン開発者らは、量子リスクに対応するための提案(BIP-360およびBIP-361)を検討中。BIP-361では、10年以上動いていないアドレスに関連するコインを凍結することでリスクを低減する案が示されている。これはサトシ・ナカモトとされる110万BTCを含む可能性がある。

今後の展望

リップルの動きを受け、他の暗号資産ネットワークがどのような対策を講じているのか、あるいは脅威が現実化するまで様子を見ているのかが注目される。量子コンピュータの脅威は、暗号資産業界にとって避けて通れない課題となっている。

出典: DL News