パソコン画面をぼんやり見つめながら、「これでいいのだろうか?」と考えた経験は誰にでもあるだろう。一時的な感情で済む人もいれば、それが長期的な不満に変わり、サイレント・クイッティングや退職に至る人もいる。しかし、退職が根本的な問題解決につながることは少ない。
ギャラップの最新調査によると、新しい仕事を見つけるのに「良い時期」だと考えている労働者はわずか30%だが、半数以上がすでに転職活動を始めているという。筆者は15年にわたりセラピストとして活動してきたが、多くの優秀で創造的な人々と出会ってきた。彼らは「もっとできるはずなのに、エネルギーの向かう先がわからない」と感じていた。こうした「落ち着かない魂」を持つ人々(筆者もその一人だ)は、仕事も人生も「全力で没頭すべき」と考える傾向がある。学びと成長への意欲は強みだが、それが停滞感につながることもある。
多くの人は「辞める」か「給料分の仕事をするだけ」の二択だと考えがちだが、実は第三の選択肢が存在する。今の仕事に「 presenza(存在感)」を持ち込み、充実感を見出す方法だ。
自分にとって本当に大切なものを正直に見つめる
常に「何か足りない」と感じる人は、多様な興味や才能を持っていることが多い。しかし、充実感は「何でもできること」からではなく、「自分にとっての整合性」から生まれる。得意なことが必ずしもキャリアや趣味になる必要はない。習慣や周囲の期待、外部からの承認によって得意になっていても、それが人生の目的や自分らしい生き方に合致するとは限らないのだ。
最近、筆者はキャリアの見直しを図るクライアントと出会った。彼は、自分の望む方向性と、これまでのキャリアパスの「論理的な次のステップ」との間で葛藤していた。トップの成績で卒業し、アイビー・リーグで二つの学位を取得し、誰もが羨むような職に就いていた。しかし、子どもの誕生を機に仕事の負担に圧倒され、ワークライフバランスの重要性を強く感じるようになった。それでも、これまで築いてきたキャリアから離れられずにいた。彼のアイデンティティは、周囲からの成功の承認(同僚、家族、職場からの評価)に深く結びついていたのだ。
そこで、彼の価値観の変化を再評価する作業を始めた。筆者は、彼に「社会からの成功メッセージ」や「自分がこうあるべきだという narrative(物語)」から離れ、今後の人生で本当に求めているものを正直に見つめるよう促した。その結果、彼は大きな変化を前に「今の仕事で後退する方法」を模索し始めた。充実感は、自分が大切にしている価値観を理解し、それを現在の仕事にどのように取り込むかを考えることから始まるのだ。
「結果が見えるまで続ける」という選択肢
「落ち着かない気持ち」は、何かが変化を求めているサインかもしれない。しかし、そのサインが何を伝えようとしているのか、すぐに理解できるとは限らない。時には、今の仕事に「十分な時間をかける」ことで、新たな気づきや機会が見えてくることもある。
例えば、新しいスキルを学び始めたばかりの頃は、不安や停滞感を感じるものだ。しかし、継続することで徐々に自信がつき、仕事の進め方そのものが変わってくる。同様に、今の仕事に対する不満も、長期的な視点で見れば「成長の過程」である可能性がある。重要なのは、その不満を「退屈の表れ」ではなく、「変化への準備ができているサイン」として捉えることだ。
今の仕事に「存在感」を取り戻す具体的な方法
第三の選択肢を実践するための具体的なステップを紹介しよう。
- 価値観の棚卸しを行う:自分にとって本当に大切なものは何か。お金、自由、創造性、安定、社会貢献など、優先順位をつける。
- 仕事との「整合性」を高める:現在の仕事に、自分の価値観を反映させる方法を考える。例えば、リーダーシップを発揮したいなら、チームプロジェクトに積極的に関わる。創造性を求めるなら、業務改善の提案をするなど。
- 小さな変化を積み重ねる:一気に全てを変えるのではなく、今できる小さなステップから始める。例えば、毎日の業務で「意図的に集中する時間」を設ける、新しいツールを導入して効率化を図るなど。
- 「今」にフォーカスする:未来のキャリアプランを考えるのも大切だが、同時に「今の仕事でできること」に目を向ける。例えば、同僚との関係構築、業務プロセスの改善、スキルアップの機会を探すなど。
- 「存在感」を意識する:仕事に対する姿勢を見直す。単に「時間を過ごす」のではなく、「今ここにいる自分」を大切にする。例えば、ミーティングでは積極的に発言する、フィードバックを求める、自分の仕事に対する責任感を持つなど。
まとめ:辞めずに充実を取り戻すための心構え
仕事への不満や停滞感は、必ずしも「辞める」ことだけで解決するわけではない。むしろ、今の仕事に「新たな意味」を見出すことで、充実感を取り戻すことができる。そのためには、自分自身の価値観を理解し、それを仕事に反映させることが重要だ。時には「落ち着かない気持ち」を「成長のサイン」として捉え、今できる小さな変化を積み重ねていこう。辞めるか続けるかの二択にとらわれず、第三の選択肢を模索してみてほしい。