湾岸同盟の分裂:UAEのOPEC脱退が象徴する対立

2024年、湾岸諸国を揺るがす重大な変化が相次いだ。UAEがOPEC(石油輸出国機構)からの脱退を発表し、サウジアラビアはスポーツ事業への巨額投資を頓挫させた。米国の同盟国同士の対立が表面化し、イランの攻撃が両国の経済戦略を直撃している。

トランプ外交の失敗:湾岸の「黄金時代」構想が崩壊

2023年のトランプ前大統領による湾岸歴訪から1年。当時、湾岸諸国は「脱石油」を掲げ、AIや観光、米国資本を活用した安定した未来像を描いていた。しかし、そのビジョンは大きな打撃を受けている。

トランプ氏が当時獲得した数兆ドル規模の投資計画は宙に浮き、米国が主張した「湾岸資金による黄金時代」の構想も実現の目処が立っていない。

イランの攻撃が露呈した脆弱性

湾岸諸国は長年、ドバイモデルと呼ばれる「安定性の贅沢品」を売り込み、外国人観光客や投資家を惹きつけてきた。しかし、イランによる高級ホテルや空港への攻撃は、この戦略の根幹を揺るがしている。

Constellation EnergyのCEO、ジョー・ドミンゲス氏は、Axiosの取材に対し、「イランが安価なドローンで200億ドル規模のデータセンターを攻撃できる状況では、誰もサウジアラビアやUAEに巨大データセンターを建設しようとは思わない」と述べた。

サウジアラビアの財政逼迫:大型プロジェクトの見直しが進行

サウジアラビアは、2022年からLIVゴルフへの50億ドル超の投資を始めとしたスポーツ事業からの撤退を発表。これは、原油輸出の減少により国家財政が逼迫していることの表れだ。2034年のワールドカップ開催に向け、今後は大型プロジェクトへの投資が見直される見通しだ。

UAEの独立路線:OPEC脱退が象徴する戦略転換

UAEは2023年春に発表した1.4兆ドル規模の米国投資計画に続き、OPEC脱退を発表。これにより、独自の石油戦略を展開する方針を明確にした。この発表は、サウジアラビア主導のOPEC首脳会議が開催された当日に行われ、サウジアラビア側は「驚きと激怒」の反応を示したと関係筋は語る。

根深い対立:個人的な確執が背景に

UAEとサウジアラビアの対立は、石油政策だけにとどまらない。両国の指導者間の個人的な確執や、イエメン、スーダン、パレスチナ問題に対する見解の違いが背景にある。イランとの戦争は、この対立をさらに深刻化させた。

UAEのムハンマド・ビン・ザイード大統領は戦争回避を望み、トランプ氏に対し反対を表明していた。しかし、戦争が始まると、イランの勢力拡大を阻止するため徹底抗戦の姿勢を示した。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(MBS)は当初は戦争を支持していたが、経済へのダメージが明らかになると、早期の停戦を模索するようになった。

周辺国の動向:カタール、イスラエル、トルコの戦略的選択

カタールはガス輸出の打撃と米国・イランの板挟みに苦しんでいる。その一方で、UAEはイスラエルとの関係強化(アブラハム合意)を推進し、イスラエルから初めてミサイル防衛能力を提供された。

一方、サウジアラビアはトルコやパキスタンとの関係を強化。トランプ氏は依然としてイスラエルとサウジアラビアの歴史的な国交正常化を模索しているが、サウジアラビア側の態度は冷え込んでいる。

湾岸の未来:不透明感が増す経済戦略

湾岸諸国が描いてきた「脱石油・観光立国・AI先進国」というビジョンは、イランの攻撃や同盟国間の対立により、実現のハードルが高まっている。今後、湾岸の経済戦略は大きな転換を迫られる可能性が高い。

出典: Axios