米メタ社がAIモデルの学習に従業員のマウス操作データを活用する方針を打ち出し、社内で大きな反発を招いている。同社は社用PCを使用する従業員に対し、マウスの動きやクリック、メニュー操作などのデータ収集を義務付けており、プライバシー侵害やAIによる職の代替への懸念が高まっている。
社内署名運動とポスター掲示で抗議
ロイター通信によると、メタ社の従業員らはオンライン署名運動を展開し、米国内の複数オフィスで会議室や自動販売機に「従業員データ抽出工場で働きたくない?」と記載したポスターを掲示している。署名活動は、労働条件改善を目的とした組織化を保護する米国労働関係法(National Labor Relations Act)を引用した内容となっている。
AIモデル学習に必要なデータ収集
メタ社の広報担当者は、従業員のPC操作データがAIエージェントの開発に不可欠であると説明する。同社によると、日常的なタスクを支援するAIエージェントを構築するには、実際のユーザー操作データが必要であり、マウスの動きやクリック、メニュー操作などのデータを収集する内部ツールを導入するとしている。また、機密情報の保護に関する「セーフガード」が設けられていると主張している。
AI競争の加速と従業員の不安
メタ社はAI分野で競合他社に先行するために数千億ドル規模の投資を続けているが、その過程で従業員にAI活用を強制する方針を打ち出してきた。AIの使用状況が業績評価に反映されるほか、大規模なレイオフが繰り返される中で、従業員の不満は高まっている。ニューヨーク・タイムズによると、従業員らは次回のレイオフのカウントダウンを行うウェブサイトを作成するなど、職場の不安が表面化している。
テック業界全体に広がる反発
メタ社の動きは、テック業界全体で加速するAI導入の波を象徴している。直近ではリンクトインが従業員の5%に相当する人員削減を発表し、コインベース、クラウドフレア、ペイパルなども相次いでレイオフを実施している。こうした状況下で、メタ社の従業員らは単なるレイオフへの不満にとどまらず、職場環境や監視体制に対する抗議を公然と行っている点が特徴的だ。
「AIモデルの学習には実データが不可欠。従業員の操作データは、AIが人間のタスクを支援する上で重要な役割を果たす」
メタ社広報担当者
今後の展開と課題
メタ社のデータ収集方針は、AI技術の進化と従業員のプライバシー保護のバランスをめぐる議論を再燃させている。同社は引き続きAIモデルの開発を進める一方で、従業員の反発にどのように対応するのか注目される。テック業界におけるAI導入の加速とともに、職場の監視体制や労働条件に関する議論は今後さらに活発化する可能性がある。