米国の家庭が化石燃料依存の暖房器具から脱却し、よりクリーンで効率的な暖房システムへ移行するには、台所の家電を大型化する必要がある。その選択肢は 2 つ。1 つは「電気抵抗式暖房」、一般にスペースヒーターと呼ばれるもので、部屋を暖める代わりにパンを焼く「巨大なトースター」のような役割を果たす。もう 1 つが「ヒートポンプ」だ。これは、凍えるような屋外の空気からも熱を吸収し、室内に送り込む装置で、冷蔵庫が庫内の熱を外に放出する仕組み(冷蔵庫の裏が温かい理由)と同じ原理で動作する。
エネルギー専門家らは、温室効果ガス排出量の削減と人々の健康向上のため、有害なガス furnace やボイラーをヒートポンプに早急に置き換えるべきだと指摘する。同時に、これまであまり注目されてこなかった「巨大なトースター」ことスペースヒーターも、効率的で快適な「逆向き冷蔵庫」であるヒートポンプに置き換えることで、暖房コストを大幅に削減できるという。
非営利エネルギー団体 RMI が発表した新たな報告書によると、米国の家庭の 5 世帯に 1 世帯(約 20%)が主に電気抵抗式暖房で暖を取っている。これらの機器をヒートポンプに置き換えれば、世帯当たり年間平均 1,530 ドル(約 23 万円)の節約になり、全米で年間 200 億ドル(約 3 兆円)の削減効果が見込まれる。なお、この試算は一戸建て住宅のみを対象としており、集合住宅は含まれていない。
同時に、電力網への負荷も大幅に軽減される。また、暖房と給湯にヒートポンプを導入することで、家庭からの CO2 排出量は約 40% 削減されるという。RMI のカーボンフリー建物プログラムマネージャー、ライアン・シェア氏はこう述べる。「電力網へのメリットは電気料金の低下にもつながります。もちろん、エネルギー消費量が減るという利点もあります」
ヒートポンプが高効率な理由は、物理学の「圧力変化による熱移動」という原理に基づいている。冷媒の圧力を変化させることで、屋外の空気や地中を流れる液体から熱を吸収し、室内に供給する。夏場はこのプロセスが逆転し、従来のエアコンのように室内を冷却する。ヒートポンプは、化石燃料を燃焼させる furnace や電気抵抗式暖房のように熱を「生成」するのではなく、熱を「移動」させるだけであるため、エネルギー効率が極めて高い。
ヒートポンプの「成績係数(COP)」は約 3 で、これは消費した電力 1 単位に対し 3 単位の熱を生産することを意味する。つまり、300% の効率を誇る。一方、電気抵抗式暖房の COP は 1 で、最も効率的なガス furnace でも COP は 1 を下回る。あらゆるタイプの住宅で、ヒートポンプは電気抵抗式暖房やガス furnace の代替として導入が進んでいる。
配管設備がない住宅の場合は、壁埋め込み型のヒートポンプユニットが屋外と室内の空気を交換する。配管設備がある住宅では、室内ユニットが furnace に代わり、屋外ユニットと接続して熱交換を行う。また、寿命を迎えたエアコンユニットをヒートポンプに置き換えれば、冷暖房機能を兼ね備えたシステムとなる。