国際海事機関(IMO)の最新会議で、世界の海運排出削減に向けた「ネットゼロ枠組み」の合意に向けた動きが再び活発化した。2025年末の採択を目指していた同枠組みは、米国の反対により延期されていたが、今回の会議では代替案が提示され、2026年12月の採択に向けた再交渉が行われた。
2025年4月のMEPC83会議では、米国が途中で交渉から離脱したものの、各国は「ネットゼロ枠組み」で合意していた。しかし同年10月、米国交渉官が「強硬策」を取ったと非難され、正式な採択は見送られた。同枠組みは、2023年にIMOが採択した海運業のネットゼロ目標実現に向けた実務的な対策セットであり、パリ協定の対象外である海運業の排出量(世界の総排出量の2%超)を削減することを目的としている。
なぜ枠組みは昨年延期されたのか
2025年4月の会議では、排出量課徴金(実質的な炭素税)とクレジット取引システムを含む妥協案が提案された。多くの国がこれを支持し、2028年までに排出強度を4%削減、2035年までに30%削減する目標が設定された。上限目標も2028年に17%から2035年に43%へと段階的に引き上げられる計画だった。排出基準を満たせない船舶は、1「ティア2」単位あたり380ドルの「是正ユニット」を購入する必要があった。
反対派の主張と代替案
米国をはじめとする化石燃料生産国や業界団体は、炭素価格メカニズムの廃止または枠組み自体の放棄を求めてきた。直近のMEPC84会議(7月、ロンドン)では、リベリアとパナマ(世界商業船舶の3分の1を管轄する「旗国」)が中心となり、ブラジルやEU、太平洋諸島国などの支持派と対立した。反対派は「利害のバランスが取れた枠組み」と主張する支持派に対し、炭素価格を事実上排除する代替案を提示した。
最終的に、会議では合意再構築へのコミットメントが再確認され、枠組みは維持された。委員会は2026年12月の次回会議での採択を目指す方針だ。
主要なプレイヤーと今後の展望
支持派にはブラジル、EU、太平洋諸島諸国が名を連ね、反対派は米国、化石燃料生産国、一部の業界団体が中心となっている。今後の交渉では、炭素価格メカニズムの扱いが最大の焦点となる見込みだ。IMO事務局は、枠組みの実効性を高めるため、さらなる調整が必要との立場を示している。
「この枠組みは、すでに利害のバランスが取れた合意案だ。反対派の主張は、実効性のない緩和策につながるリスクがある」
— ブラジル代表
海運業の脱炭素化は、地球温暖化対策の重要な柱の一つと位置づけられており、国際社会の注目を集めている。