トランプ政権の税制改正が再生可能エネルギー業界に混乱を招く

投資判断に不可欠な「確実性」が不足。再生可能エネルギー業界では、トランプ政権による税制優遇策「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」の未整備な規則が投資家や事業者を悩ませている。特に「外国関係者規制(FEOC)」と呼ばれるルールが、プロジェクトの遅延や法律顧問の需要増加につながっている。

「外国関係者規制」とは?

OBBBAにより、再生可能エネルギー関連の税額控除を受ける企業は、ロシア、イラン、北朝鮮、中国を「関心国」と定められた「外国関係者」との取引に厳しい制限が課される。具体的には、以下の条件に該当する企業は税額控除を受けられない可能性がある。

  • 債務の15%以上が上記4カ国のいずれかによって発行されている
  • 経営幹部の任命権を外国関係者が有する
  • 単一の外国関係者が25%以上を所有、または複数の外国関係者が合計40%以上を所有

このうち、特に影響が大きいのが中国企業との関係だ。米国の再生可能エネルギー業界は中国企業とのサプライチェーンや資金調達で深いつながりがあり、規制の厳格化はプロジェクトの実施に大きな障害となっている。

規則の曖昧さが事業停滞の原因に

問題は、FEOC規則の具体的な適用方法が未だに明確化されていない点だ。米財務省は2月に暫定ガイドラインを発表したが、その多くは「物的支援」に関するもので、プロジェクトコストのうち中国など4カ国と関連する部分の割合をどう算出するかという点にとどまっている。その一方で、「実効支配」や外国からの影響力の算定方法については依然として不透明なままだ。

このため、多くの企業が税理士や弁護士に相談を余儀なくされており、ヘザー・クーパー(McDermott Will & Emeryパートナー)は次のように指摘する。

「FEOCの所有権規則は『全てか無か』の世界です。部分的にクリアすればいいというものではなく、完全に規則を満たさなければ税額控除は一切受けられません。救済措置もありません。これは企業にとって非常に大きなリスクです」

この不確実性が市場に与える影響は深刻だ。2月にはモルガン・スタンレーとJPMorganが再生可能エネルギー向け融資業務を一時凍結したが、クーパーによれば、現在は若干の改善が見られるという。

「多くの関係者が合理的な解釈に基づいてプロジェクトを進められるようになってきました。しかし、再生可能エネルギー業界にとっては、投資家や保険会社、開発業者など全ての関係者が事業を継続する必要があります。この不確実性は依然として大きな負担です」

2027年までの猶予期限が迫る

再生可能エネルギー関連の税額控除を受けるためには、2027年末までにプロジェクトを稼働させるか、2024年7月4日までに建設を開始する必要がある。しかし、FEOC規則の詳細が未確定な状況では、多くの企業がスケジュール通りにプロジェクトを進められないリスクに直面している。

業界関係者からは、規則の早期明確化を求める声が上がっているが、トランプ政権の政策方針は依然として流動的だ。再生可能エネルギー業界の将来は、今後の規則策定次第と言えるだろう。