生命の設計図である遺伝暗号は、DNAの3塩基が20種類のアミノ酸を指定する仕組みで、地球上のほぼ全ての生物に共通している。この暗号が生命の共通祖先にまで遡る可能性が高いとされてきたが、その進化過程には未解明の部分が多い。

米コロンビア大学とハーバード大学の研究チームは、この遺伝暗号の進化仮説を検証するため、20種類のうち1種のアミノ酸を排除し、19種類で機能するリボソームの作製に挑戦した。実験では、通常必須とされる「イソロイシン」を使用しないリボソームの構築に成功。これにより、初期の生命がより単純な遺伝暗号を持っていた可能性が示された。

遺伝暗号の進化を探る実験

これまでの研究では、遺伝暗号に新たなアミノ酸を追加して機能拡張を図る試みが主流だった。しかし今回の研究は、逆にアミノ酸を削減するという逆転の発想で行われた。研究チームは、イソロイシンを必要としないリボソームの設計に成功し、遺伝暗号の柔軟性と進化の可能性を示した。

生命の起源解明に向けた一歩

「遺伝暗号は生命の根幹をなすシステムであり、その進化過程を理解することは生命の起源解明に直結する」と研究チームは述べている。今後、同様の手法で他のアミノ酸の排除実験が進めば、遺伝暗号の最小構成や初期生命の姿に迫る重要な手がかりが得られる可能性がある。

「今回の成果は、遺伝暗号が徐々に拡張されてきた可能性を示唆するものだ。初期の生命がより単純な暗号を持っていたとすれば、その進化の過程を解明する手がかりとなる」
(研究チーム代表者)

今後の展望と課題

研究チームは、今後も他のアミノ酸の排除実験を進め、遺伝暗号の最小構成を明らかにする計画だ。一方で、19種類のアミノ酸で機能するリボソームが実際の生命システムでどのように機能するのか、さらなる検証が必要となる。

この研究成果は、生命の起源や遺伝暗号の進化に関する理解を深めるだけでなく、合成生物学や遺伝子工学の分野にも新たな可能性をもたらすと期待されている。