2024年11月、米国でトランプが2度目の大統領選で勝利した直後、米国全土に広がった不安が新興企業にとって追い風となった。分散型SNS「Bluesky」はこの時期に新規登録者数が500%急増し、アクティブユーザー数は約250万人に達した。同社はこの期間に1500万ドル(総額1億ドル)の資金調達にも成功し、その背景にはユーザーがフィードやアイデンティティを自由に管理できる「分散型」のアーキテクチャがあった。当時、マーク・キューバンはBlueskyを「より憎しみの少ない世界」と呼び、メディア研究者らはX(旧Twitter)の「魅力的な代替手段」と評した。

成長の陰り:ユーザー離れが加速

しかし、2025年末までに状況は一変した。Blueskyのアクティブユーザー数は40%減少に転じ、現在もユーザー数の減少傾向が続いている。かつてXの対抗馬として「より倫理的で原理主義的なTwitter」と称されたBlueskyだが、今やユーザーの維持と持続可能なビジネスモデルの構築に苦戦している。反X勢力の受け皿として「レジスタンスTwitter」とも呼ばれた同プラットフォームは、そのアイデンティティが逆に足かせとなっている可能性がある。

エコーチェンバー化とユーザー流出の懸念

Blueskyの特徴である分散型アーキテクチャは、一方で「エコーチェンバー(同調圧力)」を生み出すリスクも孕んでいる。特に自認するリベラルユーザー層が形成する閉鎖的なコミュニティは、時として活発なジャーナリストや批評家を遠ざける要因となっている。分散型SNSの専門家らは、Blueskyが直面している課題を「Twitter初期と同じ問題」と指摘する。すなわち、ユーザー体験の本質を損なうことなく成長と収益化を両立させる難しさだ。

理想と現実の狭間で模索するBluesky

Blueskyは確かにインターネット上の明確なニーズを満たす存在だった。 hate speech(ヘイトスピーチ)やスパムといった悪意ある行為を抑制するルールを備えた、分散型で対話重視のプラットフォームとして注目を集めた。同社のタイミングも幸運だった。2022年にイーロン・マスクがTwitterを買収しXに改名、混沌とした「何でもあり」の環境へと変貌させた直後、Blueskyはローンチされたのだ。現在もXでは誤情報や低品質なAI生成コンテンツが横行しているが、その一方でユーモアや批評といった「文脈のあるコンテンツ」が流通し続けている。Blueskyはそうした「普通のユーザー(normies)」を取り込むことに成功しておらず、その点が課題となっている。

分散型SNSの先駆者としての挑戦

Blueskyのルーツは2019年に遡る。当時TwitterのCEOだったジャック・ドーシーが「オープンで分散型のソーシャルメディア」の構築を目指す実験的プロジェクトとして立ち上げたのだ。ドーシーはユーザーのデータ管理に重点を置き、ヘイトスピーチや誤情報、スパムに対するコンテンツモデレーションを重視する姿勢を示していた。これはXでマスクが意図的に煽動を繰り返すのとは対照的なアプローチだった。

2021年にはソフトウェアエンジニアのジェイ・グラバーがCEOに就任したが、最近になって退任を発表。同社のさらなる不確実性を招いている。Blueskyは現在、ユーザー体験の維持と収益化のバランスを模索中だ。専門家らは、分散型SNSの普及には「ユーザーの信頼を損なわない成長戦略」が不可欠だと指摘する。Blueskyが今後どのような方向性を示すのか、注目が集まっている。