キム・カーダシアン氏のInstagram投稿が招いた誤認事件

テキサス州の死刑囚と間違われた男性が、世界的セレブのキム・カーダシアン氏の投稿により名誉を傷つけられたと主張し、カーダシアン氏を提訴していた。しかし、その訴えは反SLAPP法により棄却された後、今度はカーダシアン氏側の弁護費用として6桁の支払いを命じられるという逆転の事態に陥った。

事件の発端:死刑囚と間違われた男性

2024年初頭に死刑執行が迫っていたテキサス州の死刑囚、イヴァン・カンツゥ氏。カーダシアン氏はInstagramとFacebookで、カンツゥ氏が従兄弟とその婚約者を殺害した容疑で有罪判決を受けていると投稿し、冤罪の可能性を訴えた。しかし、投稿された写真は全くの別人だった。カーダシアン氏のチームは、LinkedInから拾ったニューヨーク在住のプロジェクトマネージャー、同じ名前のイヴァン・カンツゥ氏の写真を誤って使用したのだ。

この誤りはすぐに訂正されたが、カーダシアン氏の影響力の大きさゆえに、被害者とされた男性はインターネット上で中傷や嘲笑にさらされることとなった。被害者のカンツゥ氏は、世界的なセレブが自分の名前と殺人犯を結びつけたことで、精神的苦痛と社会的信用の失墜を被ったと主張した。

提訴と反SLAPP法による棄却

2023年にカリフォルニア州で提訴されたカンツゥ氏の訴えは、名誉毀損(文書・口頭)、プライバシー侵害、感情的苦痛の故意の引き起こし、過失による感情的苦痛、肖像権の無断使用など、複数の法的根拠に基づいていた。しかし、カーダシアン氏側は反SLAPP法(公的参加を抑圧する目的の訴訟を早期に排除する法律)を適用し、訴えの却下を求めた。

反SLAPP法は、表現の自由を保護するために設計された法律で、第一修正権(言論の自由)に基づく活動に対する merit(根拠)のない訴えを早期に排除することを目的としている。カーダシアン氏側の主張が認められ、2023年後半に訴えは却下された。

逆転の判決:6桁の弁護費用支払い命令

カーダシアン氏側は、この訴訟にかかった弁護費用の支払いをカンツゥ氏に求める動議を提出。ロサンゼルスの裁判所は12月にその動議を認め、カンツゥ氏はカーダシアン氏の弁護費用の一部を支払うよう命じられた。今週、マイケル・スモール判事はその支払いを正式に認可した。

判決文では、経済的格差にかかわらず、反SLAPP法に基づく弁護費用の支払い義務は発生すると述べられている。たとえ原告の経済力が被告より劣っていても、法廷費用の償還は義務付けられているのだ。

「たとえ原告の財政状況が被告(カーダシアン氏)よりも劣っていたとしても、その格差は425.16条(c)(1)項の弁護士費用の算定には関係ない。原告は、合理的な弁護費用をカーダシアン氏に支払わなければならない。」

被害者の主張と法廷の判断

カンツゥ氏の訴状では、カーダシアン氏の投稿により「明らかに虚偽で根拠のない、衝撃的で醜悪な情報」が拡散され、自身が中傷や嘲笑の対象になったと主張していた。しかし、裁判所は、カーダシアン氏の投稿が表現の自由の範疇にあると判断し、反SLAPP法を適用した。

一方で、カーダシアン氏側の弁護費用については、カンツゥ氏が経済的に困窮していると主張したにもかかわらず、その格差は考慮されなかった。判事は、法の下では経済力の差は弁護費用の支払い義務に影響を与えないと結論付けた。

今後の展望と法的課題

この事件は、ソーシャルメディアの影響力と法的責任の境界線をめぐる議論を再燃させた。特に、有名人の投稿が誤情報や誤認を招いた場合の法的責任の所在について、今後さらなる法整備や判例の蓄積が求められるだろう。