AI業界では処理能力の確保が熾烈な競争となっているが、xAIのGrokモデルは他社と比較して利用率が著しく低いことが判明。このため、同社はスペースXが所有する巨大データセンター「コロッサス1」の全処理能力をアンソリックにリースすることを決定した。
アンソリックは11日、スペースXとの間でコロッサス1(テネシー州メンフィス)の全処理能力を活用する契約を締結したと発表。同データセンターは300メガワットを超える処理能力を持ち、22万台以上のNVIDIA GPUに相当する規模だ。このリソースは主に、アンソリックの有料サービス「Claude Pro」(月額20ドル)および「Claude Max」(月額100~200ドル)向けの推論処理に使用される。
スペースXのCEOであるエルン・マスク氏は、自身のX(旧Twitter)で「先週、アンソリックの幹部と多くの時間を過ごし、Claudeが人類にとって善なる存在となるよう取り組んでいる姿に感銘を受けた」とコメント。同氏は「全員が高い能力を持ち、正しいことを実行することに真摯に取り組んでいた。悪い印象を与える人はいなかった」と述べ、倫理的な基準を高く評価した。
マスク氏によると、xAIは既に学習用ワークロードをコロッサス2に移行しており、コロッサス1の処理能力をアンソリックに提供できる状態にあったという。アンソリックはコロッサス1を主に、ユーザーからのリアルタイムなプロンプトに対応する推論処理に活用する計画だ。
さらに、この提携は地球圏外へと拡大する可能性も示唆されている。アンソリックは、マスク氏やスペースXと共に、数ギガワット規模の軌道上AI処理能力の開発に向けた議論を進めているという。宇宙空間にデータセンターを設置する利点として、サーバー冷却にかかるコストが事実上不要になる点が挙げられるが、その一方で、軌道上のインフラと地球間での大量データ伝送に関する技術的な課題が残されている。
オープンAIに対するマスク氏の反発が背景に
マスク氏がアンソリックに対して重要な処理能力を提供する背景には、同社のライバルであるオープンAIに対する強い敵意が影響していると見られる。マスク氏はオープンAIの共同創設者サム・アルトマン氏を批判しており、同社が設立当初の非営利目的(人類全体へのAGI普及)を逸脱し、営利追求に転じたと主張。2024年3月にはオープンAIを提訴するに至った。
一方で、アンソリックはオープンAIと同様に、AIの安全性と倫理的な開発を重視する企業として知られており、マスク氏の評価を得るに至った。同社は2023年9月に、安全性重視のAIモデル「Claude 2」を発表しており、その後も段階的にサービスを拡充している。
シリコンバレーとトランプ氏の関係に変化の兆し
米誌『アトランティック』のジョージ・パッカー記者による新たな調査記事では、シリコンバレーとドナルド・トランプ前米大統領との関係が弱まりつつある可能性が指摘されている。同記事によると、かつてトランプ氏を支持していたシリコンバレーの一部のリーダーが、現在では同氏の政策や発言に対して距離を置き始めているという。特にAI政策を巡る対立が顕在化しており、トランプ氏がAI規制の緩和を主張する一方で、シリコンバレーの多くの企業は倫理的なガイドラインの策定を求める動きを見せている。
こうした変化は、AI技術の社会的影響に対する認識の違いが背景にあると分析されている。トランプ氏はAIの軍事利用や規制緩和を推進する一方で、シリコンバレーではAIの透明性や責任ある開発を求める声が強まっている。
AIコーディングエージェントのベンチマークで新たな課題
このほか、最新のベンチマークテストでは、主要なAIコーディングエージェントが新たな課題に直面していることが明らかになった。従来のコーディングタスクでは高い精度を発揮していたこれらのエージェントが、複雑なアルゴリズムやセキュリティに関わる問題に対しては、依然として課題を抱えているという。この結果は、AIがソフトウェア開発の現場で広く活用されるためには、さらなる技術的進化が必要であることを示唆している。