世界的なエネルギー危機に直面する60カ国以上
米国とイスラエルによるイラン攻撃から1カ月が経過し、世界60カ国以上がエネルギー危機に対応する緊急措置を発表した。調査機関カーボン・ブリーフの分析によると、これまでに約200件の政策が発表され、燃料節約、消費者支援、国内エネルギー供給の強化が図られている。
中東のエネルギーインフラへの攻撃が世界市場を揺るがす
2月下旬に始まったイラン戦争では、双方が中東の重要なエネルギーインフラを攻撃。イランはホルムズ海峡を封鎖し、世界の石油・LNG(液化天然ガス)取引の約20%が通過するこのルートを遮断した。これにより、化石燃料の輸出が不可能となり、世界的な価格高騰を拡封鎖を「世界の石油市場史上最大の供給混乱」と表現。世界の石油・LNGの5分の1がこのルートを経由しており、そのうち90%がアジア向けだった。供給途絶により、各国で燃料価格が急騰し、政府は緊急対策に追われている。
各国の主な対応策
1. 燃料税の引き下げ(約30カ国)
最も多くの国で実施されているのが燃料税の引き下げ。ノルウェーからザンビアまで、30カ国以上が家計負担の軽減を目的に燃料税を削減した。
2. 再生可能エネルギーの拡充
欧州やアジアの一部の国では、長期的なエネルギー安全保障を目指し、再生可能エネルギーの導入拡大を発表。風力や太陽光発電の建設加速が進められている。
3. 短期的な石炭依存の強化
日本、イタリア、韓国などは、当面の間、エネルギー供給の安定化を図るため、石炭火力発電への依存度を高める方針を発表した。
4. アジア諸国の需要抑制策
特にアジア諸国では、燃料需要の抑制を目的に、自動車の走行規制、燃料の配給制、学校の一時休校などの措置が相次いでいる。これらの国々は中東からの化石燃料に大きく依存しており、影響が最も深刻だ。
今後の見通しと課題
2週間の停戦が発表されたものの、エネルギーインフラの被害が広範囲に及ぶことや、今後の情勢不透明さから、エネルギー危機は長期化する見込みだ。カーボン・ブリーフは、IEAやE3Gなどのデータを基に、60カ国の政府による185件の政策や発表を分析。その多くは東アジアと南アジアに集中している。
「今回の危機は、世界のエネルギーシステムに根本的な変化を迫るものだ。各国は短期的な対策だけでなく、長期的なエネルギー政策の見直しを迫られている」
カーボン・ブリーフ報告書より
まとめ
イラン戦争の勃発により、世界はかつてないエネルギー危機に直面している。各国は燃料価格の高騰を抑えるための緊急措置を講じる一方で、再生可能エネルギーへの転換やエネルギー安全保障の強化を進めている。しかし、インフラの損傷や地政学的な不確実性が続く中、エネルギー市場の安定化にはなお時間を要するとみられる。