テスラCEOのイーロン・マスクとオープンAIのサム・アルトマンCEOは、10年以上前に同社を共同設立した仲でありながら、長年にわたり公然と対立を繰り広げてきた。マスクは2019年にリーダーシップとの意見対立を理由にオープンAIを去ったが、その後も対立は激化の一途をたどっている。

マスクはオープンAIに対し、非営利団体から利益追求型企業への転換を巡り、受託者責任違反があったとして複数の訴訟を起こしてきた。直近の訴訟では、マスクが主張する「利益の不当な獲得」に対し、1300億ドルの損害賠償を求めている。オープンAI側はこれを否定し、マスクがテスラとの合併を強要した後に追放されたことで「嫉妬に駆られている」と反論している。

このたび、マスクが2024年に起こした訴訟の審理がオークランドの裁判所で始まった。マスクはオープンAIに対し、以下の要求を突きつけている。

  • 非営利から営利への転換の無効化
  • アルトマンCEOと取締役会の解任
  • 1300億ドルの損害賠償

この審理は、オープンAIだけでなく、AI業界全体に多大な影響を及ぼす可能性がある。オープンAIは業界の主要プレーヤーと数十億ドル規模の契約を結んでおり、同社が敗訴すれば業界全体に波及するリスクが指摘されている。

AI業界への波及効果

専門家らは、AI業界の過剰な投資が将来的なリターンを危うくしていると警告してきた。オープンAIの敗訴は、業界全体の不安を一気に顕在化させる「導火線」となる可能性がある。また、カリフォルニア州で「慈善団体として設立されたAI研究所が商業企業へ転換できるか」という法的根拠が問われることになり、アンソシックなど他のミッション重視のAI企業にも影響が及ぶとみられている。

オープンAIの現状と課題

審理の過程で、オープンAIのガバナンスに関する内部文書が明るみに出ており、同社の経営体制に対する批判が高まっている。同社は現在、ChatGPTやコーディングツールなどのコア事業に注力するため、不要なプロジェクトを廃止するなどのリストラを進めているが、それでも四半期ごとに数十億ドルの赤字を計上している。今後4年間で6000億ドルに上るAIインフラへの投資計画を立てている一方で、莫大な支出を賄えるだけの収益を確保できるかは不透明だ。

「この訴訟はシリコンバレーの通常は密室に閉ざされた取締役会を開け、オープンAIのガバナンスの実態を白日の下にさらした。その結果、同社の経営体制に対する信頼は大きく揺らいでいる」
ロブ・ニコルズ准教授(シドニー大学メディア・コミュニケーション学)

この審理は3週間にわたって行われる見込みで、その結果次第では、AI業界の未来を大きく変える転換点となる可能性がある。

出典: Futurism