世界一の富豪であるイーロン・マスク氏が、X(旧Twitter)上で最も多く反応するアカウントの実態が、米紙ワシントン・ポストの分析で明らかになった。
同紙によると、マスク氏は今年、無名のアカウント「XFreeze」とのやり取り回数が他の全ユーザーを上回っており、その内容はマスク氏への絶え間ない賞賛に特化していたという。XFreezeは、マスク氏のビジネスを称賛し、敵対者を攻撃し、マスク氏が好むミームを投稿することで知られ、その結果、フォロワー数はわずか2年前にはゼロだったにもかかわらず、現在では20万を超えるまでに成長した。
この関係は相互利用の構図だ。マスク氏はXFreezeを通じて「有機的な支持」の illusion(錯覚)を演出し、同アカウントはマスク氏のお墨付きによる莫大なエンゲージメントを享受している。
「文化的ハッキング」と専門家が指摘
ボストン大学のジョアン・ドノバン准教授は、XFreezeの行動を「文化的ハッキング」と表現し、「このコミュニケーションは明らかにマスク氏ただ一人に向けられたものだ」と述べた。
「マスク氏は称賛されるのが大好きで、この人はまさにその『ドーナツ工場』のような存在だ」
(ジョアン・ドノバン准教授)
また、この事実はマスク氏が「イエスマン」に囲まれる傾向にあるだけでなく、自身の世界観に沿った現実を形成しようとする試みの一例でもある。
マスク氏の「反 woke」戦略との整合性
マスク氏は、自らが開発したAI「Grok」を「反 woke」の立場から政治的に正しいチャットボットに対抗する存在として位置づけ、さらにTwitterを買収して左派色の強いプラットフォームを自身の意見を発信しやすい場に変えた。また、ウィキペディアを「woke過ぎる」と批判し、自らのAIで運営する「Grokipedia」を立ち上げるなど、自身の世界観を反映したメディア環境の構築を進めている。
こうした文脈の中で、XFreezeはマスク氏にとってまさに「神のごとく」有用な存在となっている。同紙の分析によると、XFreezeが今年投稿した投稿の約75%がマスク氏またはテスラ、スペースXといった彼の関連企業に関する内容で、残りはマスク氏が批判する「woke主義」や犯罪といったテーマに費やされているという。
XFreezeの急成長の裏側
2024年にアカウントを開設したXFreezeは、当初はフォロワー100人獲得を目指すなど、地道な活動を続けていた。しかし、次第にマスク氏への「ゴマすり」を中心とした投稿にシフトし、その結果、フォロワー数を急増させた。例えば、最近ではマスク氏の伝記作家ウォルター・アイザックソンによるロケット開発に関する説明を要約した投稿や、マスク氏の衛星インターネットサービス「スターリンク」を「地球の見えない中枢神経」と称する投稿、さらには母の日の投稿で母親がマスク氏を「天才で善良な人」と評したインタビュー動画を共有するなど、マスク氏の意向を忖度した内容が目立つ。
マスク氏はこうした投稿を頻繁にリポストしており、XFreezeとの関係はますます深まっている。