メタ社内で波紋を呼ぶ新監視システム
米メタ(旧フェイスブック)のマーク・ツォッカーべCEOが推進する新たな従業員監視システム「Model Capability Initiative(MCI)」が、社内で大きな反発を招いている。同システムは、従業員のキーボード入力、マウス操作、特定アプリ使用時の画面録画などを詳細に記録し、AIモデルのトレーニングに利用する仕組みだ。
先週、内部掲示板に投稿されたメタのエンジニアによるメッセージが、その実態を浮き彫りにした。同エンジニアは「プライバシーの侵害だと感じる。しかし、それよりも深刻なのは、人間がAIのトレーニングデータとして搾取される世界を作りたくないということだ」と訴えた。同投稿は、社内で約2万人に共有されたという。
AI推進と解雇のダブルパンチで morale 低下
この監視システムを巡る議論が過熱する背景には、メタの厳しい経営状況がある。ツォッカーべCEOはAI分野への投資を加速させる一方で、昨年11月には従業員の10%にあたる約8,000人を解雇すると発表。残った従業員には、AIツールを活用した業務効率化が求められ、AIの使用状況がパフォーマンス評価の対象にもなっている。
ある従業員は「解雇、予算削減、長年にわたる過酷な業務強化が、社内に不安と絶望感を植え付けた」と明かした。同社の監視システムは、AI推進の象徴的な存在として、従業員の間で「システムの温度計」とも呼ばれている。
社内で広がる反対運動
こうした不満を背景に、MCIに反対する署名運動が社内で始まっている。先週から回覧されている署名活動では、「企業が従業員のデータを無断でAIトレーニングに利用することが当たり前になるべきではない」と主張。社内のカフェテリアやトイレなどに、署名を呼びかけるビラが掲示されているという。
メタの監視システムに対する批判は、皮肉な側面もある。同社は過去に「ケンブリッジ・アナリティカ事件」でプライバシー問題が表面化した経緯があり、一般ユーザーのデータを巡る不祥事が後を絶たない。今回の従業員監視システムは、その矛盾を浮き彫りにする形となった。
「MCIは、AI時代のシステムが従業員に強いられる構造を象徴している。小さな一歩だが、将来的に人々が従わざるを得なくなるシステムの先駆けだ」
— メタ社内のエンジニア
メタの将来を左右する監視システム
メタは、MCIの目的を「AIモデルが人間の日常的なコンピュータ操作を学習するため」と説明している。しかし、同社のCTOであるアンドリュー・ボソワース氏は、データが「厳重に管理される」と主張するも、多くの従業員は納得していない。
業界全体がAIエージェントの開発に注力する中、メタはその中心に位置する企業の一つだ。その一方で、従業員の不満が高まることで、イノベーションの阻害要因となる可能性も否めない。今後、同社が監視システムの見直しに踏み切るのか、それとも強行するのか、注目が集まっている。