トランプ大統領、イボガイン研究加速を指示

米国のドナルド・トランプ大統領は11月9日、特定の幻覚剤薬物の研究加速を命じる大統領令に署名した。対象となるのは、うつ病など精神疾患の治療薬としての可能性が期待される薬剤で、特にアフリカ原産の植物由来のイボガインが注目を集めている。

署名式にはポッドキャスターのジョー・ローガンが同席。トランプ大統領はローガンの提言が政策立案に大きな影響を与えたと明かした。ローガンは長年、イボガインの有効性を主張しており、自身の番組でもその効果について言及していた。

ローガンの影響力

ローガンは2023年、自身のポッドキャスト番組でイボガインについて「人生を振り返るような体験を与えてくれる」と語っていた。さらに直近の番組では、米国におけるイボガイン合法化を推進する団体「Americans for Ibogaine」のCEOを招き、議論を展開。その直後、トランプ大統領がイボガイン研究の加速を発表するに至った。

ローガンとトランプの関係は必ずしも良好とはいえないが、ローガンは自身のテキストメッセージが政策につながったと明かした。ローガンが大統領に送ったメッセージには「素晴らしい提案ですね。FDAの承認を目指しませんか?」と書かれていたという。これに対し、トランプ大統領は「その通りだ」と回答したとローガンは述べている。

幻覚剤研究の市場拡大

イボガインに限らず、幻覚剤の医療利用に向けた動きが加速している。米国では、大麻合法化に続く新たな成長産業として、幻覚剤関連の研究開発が注目を集めている。

テック投資家のピーター・ティールは過去10年にわたり、幻覚剤系製薬企業への大規模投資を続けている。特に、英国のCompass Pathways社(マジックマッシュルーム由来の成分であるシロシビンの治療利用を目指す)や、ドイツのAtaiBeckley社(幻覚剤の治療利用開発)への投資を手掛けてきた。これらの企業の株価は、トランプ大統領のイボガイン政策発表を受け、急騰した。

テキサス州と保守系団体の動き

テキサス州は3月下旬にイボガインの臨床試験を開始すると発表し、5000万ドルの資金を投じる方針を示した。また、保守系の大口支援者で知られるメルサー家財団は、退役軍人のPTSD治療を目的とした幻覚剤研究に対し、100万ドル以上の寄付を行っている。

ホワイトハウスでの一幕

大統領令署名後の記者会見で、トランプ大統領は幻覚剤研究の経済的側面について触れることはなかった。その代わり、自身がイボガインを試す可能性について冗談交じりに発言した。

「イボガインをもらえますか?
「やるべきことは何でもします。落ち込んでいる時間はありませんから。とにかく忙しくしていれば、それで解決するのかもしれません。私自身、そうしていますから」

この発言は、幻覚剤研究の医療的価値よりも、その経済的・政治的な波及効果に焦点が当てられた政策の一端を示すものとなった。