ソロビジネス主催者は、日々の業務で数多くの意思決定を迫られます。例えば、どのクライアントを優先するか、料金を引き上げるか、新しいツールを導入するかなどです。企業に勤務していた頃とは異なり、委員会や上司、承認プロセスが存在しないため、全ての判断は自分一人で下さなければなりません。
筆者がプロダクトマネージャーだった頃、意思決定を「簡単に元に戻せるもの」と「戻すのが困難なもの」の2つに分類する手法を学びました。一見単純なこの枠組みが、判断のスピードと熟考のバランスを劇的に変えてくれました。このフレームワークは、ソロビジネスの運営にもそのまま応用できます。
迅速に判断すべき「元に戻せる意思決定」
多くのビジネス判断は、元に戻すことが可能です。つまり、大きなコストやリスクを伴わずに方向転換できるのです。例えば、新しいプロジェクト管理ツールの導入、SNS投稿スケジュールの調整、単一クライアント向けの価格設定のテスト、メール署名の微調整などが該当します。これらは全て、簡単に元に戻せる実験のようなものです。
プロダクトマネジメントの世界では、こうした判断を「双方向の扉(two-way doors)」と呼ぶことがあります。扉を押して中を覗き、気に入らなければ元に戻ることができるのです。リスクは低く、失敗しても取り返しがつきます。
しかし、ソロビジネス主催者の中には、全ての判断を永久的な決断であるかのように捉え、迷い続ける人が少なくありません。例えば、元に戻せるはずの選択肢に数日間も費やし、結局午後中に試せることを spreadsheet で比較検討するケースです。判断疲れに関する研究によれば、連続する意思決定は、その後の判断の質を低下させることが明らかになっています。チームがいないソロビジネスでは、この負担はより顕著です。元に戻せる判断に時間を費やすことは、肝心の仕事に費やす時間を奪うことになります。
もし、単に1ヶ月試してみれば済む選択肢に対し、比較 spreadsheet を延々と作成している自分に気づいたら、それは「迅速に判断すべき」サインです。
慎重に検討すべき「元に戻すのが困難な意思決定」
「早く動け、そして失敗しろ(Move fast and break things)」というマーク・ザッカーバーグの有名な言葉に反して、ソロビジネスでは「早く動く」ことが大きな損害を招く可能性があります。例えば、長期にわたる不利な契約を結ぶことや、アイデアの検証を怠ったままサービス開発に数ヶ月を費やすことは、ビジネスにとって大きな負担となり得ます。これらは「一方向の扉(one-way doors)」と呼ばれ、一度進んだ道を引き返すのに多大なコストがかかるか、あるいは不可能です。
こうした判断には、より慎重な検討が必要です。データ収集、同業者やメンターとのディスカッション、そして無期限の停滞を避けるための期限設定が重要です。ここでの目標はリスク回避ではありません。ソロビジネスには常にリスクが伴うものです。重要なのは、実際のリスクと自分の判断にかける時間を一致させることです。ごく一部の判断にこそ、より多くの時間を費やすべきであり、それを見極めるスキルは経験を重ねることで磨かれていきます。
独自の意思決定フィルターを構築する
「元に戻せるか否か」という区別は、意思決定の基本的な枠組みに過ぎません。時間を重ねることで、日々の判断を加速させる独自のフィルターを構築できるようになります。新たな判断に直面した際には、以下の質問を自分に投げかけてみましょう。
- 1ヶ月以内に元に戻せるか?
- 間違っていた場合の最悪のシナリオは何か?
- 複数の「まあまあ良い」選択肢の間で迷っているか?(当てはまる場合は、いずれかを選び、先に進む)
直感も意思決定において重要な役割を果たします。しかし、その直感を支えるのは、経験とこのようなフレームワークです。ソロビジネスの成功は、迅速な判断と慎重な選択のバランスにかかっています。このフレームワークを活用し、より効果的な意思決定を目指しましょう。