ニューヨーク発 — タイヤ販売のオンラインプラットフォーム「Tire Agent」を創業し、現在の時価総額1億5000万ドル(約225億円)を達成したジャレッド・クーゲル氏。彼の起業家としての道のりは、決して順風満帆ではなかった。
「失敗は成功のもと」の教訓
クーゲルは、実家のタイヤ卸売業で10年以上働いた後、2017年にベンチャーキャピタルに対し「タイヤとホイール専門の検索エンジン」というアイデアを提案した。驚くことに、そのVCはこのアイデアに10万ドルのシード資金とニューヨークのテックインキュベーター「Entrepreneurs Roundtable Accelerator」への参加を提案。技術経験がなかったにもかかわらず、クーゲルはこれを受け入れた。
しかし、インキュベーターのパートナーから「検索エンジンでビジネスを売った例を聞いたことがあるか?」と問われた際、クーゲルは「Lycos?」と答えた。相手は「その通り。そして、それは何十年も前の話だ」と指摘。この指摘を受け、クーゲルは方向転換を決意した。
3度目の挑戦でようやく軌道に
デモデーで再び投資家に対し「モバイルタイヤ交換サービス」を売り込んだが、資金調達はゼロに終わった。自力での事業展開を試みたものの、フランチャイズ展開による多都市展開が必要と考えたクーゲルは、資金不足に直面。2018年には銀行から差し押さえ通知を受け、自らも「クラッカーとゼリーだけで生活する」極貧状態に陥った。クーゲルは「ホームレスになるか、成功させるかの瀬戸際だった」と語っている。
そんな折、ニューヨークのエンジェル投資家グループがクーゲルの窮状を知り、75万ドルのプレシードラウンドを支援。クーゲルは再び事業方針を転換し、ロードハザード保護サービスに参入した。Allstateと提携し、約100の小売業者との関係を構築したが、B2B2Cモデルゆえに成長が鈍かった。
最終的に、クーゲルはオンラインタイヤ販売の「Tire Agent」を立ち上げた。その結果、初月の売上1万8000ドル、2カ月目9万ドル、3カ月目12万ドルと急成長。投資家からの追加資金を獲得したクーゲルは、顧客のニーズに応える機能を追加。高価なタイヤ交換費用や取り付けの手間を解消する「秘密のソース」を見出したのだ。
顧客体験重視のビジネスモデル
Tire Agentの成功の鍵は、リーズナブルな価格設定と当日または翌日配送、そして広範な取り付けネットワークの3つに集約される。これにより、顧客は手頃な価格でタイヤを購入し、迅速に取り付けられるようになった。
「失敗を重ねたからこそ、今の成功がある。大切なのは、失敗から学び、柔軟に方向転換することだ」
— ジャレッド・クーゲル
今後の展望と教訓
現在、Tire Agentは米国全土で事業を拡大中。クーゲルは「失敗を恐れず、常に顧客目線で考えることが大切」と語る。彼の起業家としての歩みは、多くの起業家にとっての羅針盤となるだろう。