仕事で感じる苛立ちや不安、恐怖。それらを感じながらも、冷静な判断で行動を選択することは可能だ。古代ギリシャ・ローマの哲学者たちが説いた「ストア派」の教えが、その答えを示してくれる。
ストア派の哲学は、混乱する現実の中で冷静さを保ち、自分のコントロール下にあることに集中し、そうでないことにエネルギーを無駄にしないことだ。筆者は数年にわたりストア派の思想家、マルクス・アウレリウス、セネカ、エピクテトスの教えを学び、自分自身と仕事の関係性を大きく変えてきた。今では「感情と行動の間のギャップ」を最大限に活かす術を実践している。以下に、仕事で最高の自分になるための4つのストア派の教えを紹介する。
1. 反応はあなたがコントロールする
仕事上で経験する出来事のすべてが、あなたのコントロール下にあるわけではない。しかし、その出来事に対するあなたの反応は、完全にあなた自身のものだ。
例えば、同僚が会議であなたのアイデアを無断で発表したとしよう。怒りが湧き上がり、思わず激高してしまうかもしれない。そんな反応は人間として自然なものであり、誰もが経験する。しかし、その後の行動や結果は、あなた自身の選択次第だ。
ストア派の教えでは、これを「コントロールの二分法」と呼ぶ。エピクテトスはこう述べている。「コントロールできるものとできないものがある。コントロールできるものは、意見、追求、欲求、嫌悪、つまり自分の行動だ」。
例えば、上司に仕事を評価されるかどうか、取引が成立するかどうか、同僚から尊敬されるかどうか。これらはあなたのコントロール圏外にある。しかし、それらに対するあなたの解釈や行動は、あなたのコントロール下にあるのだ。
何かがうまくいかなかった際に発言する前に、まずは自分がコントロールできることに立ち返ろう。そして、状況を悪化させるような要因は手放すのだ。あなたを最も苛立たせる同僚は、あなたに忍耐力を教えてくれる存在かもしれない。失敗したプロジェクトは、悪い知らせをどう伝えるかを学ぶ機会を与えてくれる。
2. 感情に名前をつけ、その支配から逃れる
セネカは「私たちは想像の中でより多くの苦しみを抱える」と述べた。心は現実以上に問題を大きく捉えがちだ。私たちは過去の経験について頭の中で何度も葛藤し、後悔や不安を抱え続ける。
感情に名前をつけることで、その支配から抜け出すことができる。例えば「恥ずかしい」や「脅威を感じる」といった感情に名前をつけることで、その感情と距離を置くことができる。距離を置くことで、選択肢が生まれ、冷静な思考が可能になる。
上司がチームの前であなたの提案を却下したとしよう。その時、あなたは「屈辱を感じる」という感情に襲われる。しかし、その感情に名前をつけることで、それを客観的に捉えられるようになる。あなたはその感情に飲み込まれるのではなく、それを分析し、改善策を考えることができる。
「人々を悩ませるのは出来事そのものではなく、出来事に対する判断だ」とエピクテトスは語っている。感情に名前をつけることは、その第一歩に過ぎない。しかし、それを認識することで、初めて冷静な判断が可能になるのだ。