医学研究の信頼性を揺るがすAI依存の問題が浮き彫りに。ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)は、北京の研究者による論文を撤回した。同誌が発表した撤回声明によると、研究者らはAIツールを用いて画像内の計測スケール(定規)の位置を移動させた際、スケールの数値が不自然な並びになり、結果として画像が不正確になったという。

同誌は2024年5月、北京の研究者2名による「山火事の煙吸引後に肺内に気管支鋳型が形成された」とする症例報告を掲載したが、その後の調査で画像加工にAIが使用されたことが判明。撤回に至った。

AI画像加工の落とし穴:計測スケールに現れた不自然な数値

撤回された論文の画像には、患者の肺から摘出された気管支組織が写っていた。しかし、画像上部に写る計測スケール(定規)の数値が不規則に並んでおり、専門家から「AI画像生成ツールによる典型的なミス」と指摘された。

研究者らは「AIツールを使用してスケールの位置を上部に移動させたが、スケールの数値自体は変更していない」と主張。一方で、画像内の肺の断片が多すぎるなど、他の部分にもAI加工の疑いが指摘されている。

研究者の説明とNEJMの対応

研究者らは「緊急時に撮影された画像で、スケールは斜めに置かれていた。見やすさを考慮してスケールの位置を調整しただけで、他の画像内容は改ざんしていない」と説明。また「元画像はNEJM編集部に提出済み」と述べ、再送は不可能とした。

NEJMは撤回声明で「研究者らはジャーナルの画像加工ポリシーを認識しておらず、AIツールの使用がミスにつながった」と指摘。今後、AIツールの使用に関するガイドライン強化を検討している。

医学研究におけるAI依存のリスク

この事例は、医学研究におけるAI依存のリスクを浮き彫りにした。AIツールは画像加工やデータ分析に有用だが、不適切な使用は研究の信頼性を損なう可能性がある。専門家らは「AIツールのブラックボックス化が進む中、研究者はその限界を理解し、適切な使用方法を模索する必要がある」と警鐘を鳴らす。

また、ソーシャルメディア上では「他の画像部分にも加工の疑いがあるのではないか」との声も上がっており、NEJMの対応が注目されている。

出典: Futurism