暗号資産(仮想通貨)のハッキング容疑者、アンドレアン・メジェドビッチ(Andean Medjedovic)氏のウォレットが、1年ぶりに活動を再開した。同氏は分散型金融(DeFi)プロトコル「Indexed Finance」と「Kyberswap」のハッキング事件の容疑者として知られている。

今月12日、メジェドビッチのウォレットから1350万ドル相当のイーサリアム(ETH)が、盗まれた資金の洗浄に利用されることで知られる「Tornado Cash」に送金されたことが、オンチェーンデータにより確認された。ただし、この取引がメジェドビッチ本人によるものかは不明だ。

米司法省は2023年2月、メジェドビッチを「Indexed Finance」と「Kyberswap」のハッキング容疑で、電信詐欺、コンピューターハッキング、恐喝未遂の罪で起訴している。しかしメジェドビッチは自身の行為を「コードの脆弱性を突いた正当な取引」と主張し、業界内で「コードは法なり(code is law)」と呼ばれる考えを引用している。

これまでの被害総額は6500万ドル超

2021年から2023年にかけて、メジェドビッチは「Indexed Finance」と「Kyberswap」のコードの脆弱性を悪用し、計6500万ドル以上を不正に入手したとされている。同氏のウォレットからTornado Cashへの送金は、これまでの資金洗浄額を合わせると約2500万ドルに上る。

数学の天才から暗号資産ハッカーへ

メジェドビッチはカナダ出身の数学の天才として知られ、14歳で高校を卒業した後、トロント大学に進学。イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏と同大学で学んだ経歴を持つ。通常4年かかる学部課程を3年で、修士課程を1年で修了したという。

2021年10月、メジェドビッチが「Indexed Finance」から1600万ドルを盗んだ容疑で特定されたのは、些細なデジタルの手がかりからだった。当時、メジェドビッチは自身が出演したカナダのテレビ番組のウィキペディアページを編集し、「著名な数学者」として自らを追加していた。この編集に使用したユーザー名が、ハッキングに使用されたウォレットと関連していたことから、実名とハッキングの関連が判明した。

しかし、この証拠だけでは逮捕には至らず、メジェドビッチは2021年12月にオンタリオ州の裁判所から逮捕状が出された後、逃亡生活に入った。

「ホワイトハッカー」を自称も、資金洗浄は継続

2023年初頭、メジェドビッチは取材に対し、現在も行方をくらましており、名前を明かさない島で生活していると語った。また、自身の社会的見解を強調し、女性を蔑視する発言や人種差別的なコメントを繰り返したという。さらに、自身を「ホワイトハッカー(倫理的ハッカー)」と称し、システムの脆弱性を発見・修正するセキュリティ専門家に転身したと主張していた。

しかし、その後も「Indexed Finance」のハッキングに関連するウォレットから資金が流出し続けていることが確認されている。

「被害者を複数にわたって搾取した脅威アクターが、これほど大胆に行動するのは非常に危険だ。早急に逮捕され、責任を問われることを望む。」
スペクター(Specter)氏(偽名のブロックチェーン調査官)

出典: DL News