ポーランド議会は7月5日、暗号資産(仮想通貨)の規制に関する新法を可決した。同法はEUの「暗号資産市場規制(MiCA)」への整合を図るもので、ライセンス発行や監督体制、消費者保護の枠組みを定める。ポーランド金融監督当局は7月までのMiCA施行に間に合わない場合、国内企業が暗号資産サービスを停止せざるを得なくなると警告していた。
しかし、この動きは同国最大手の暗号資産取引所「Zondacrypto」の経営破綻をめぐる不正疑惑と重なり、政治的な対立を深めている。Zondacryptoは2022年以降、顧客約3,000人が資金へのアクセスを失う事態に陥り、被害額は3億5,000万ズウォティ(約9,600万ドル)に上ると推計される。中央ヨーロッパにおける最も深刻な暗号資産関連の失敗例の一つとなっている。
首相のドナルド・トゥスク氏は、同社の背後にロシア資本が関与していると主張。治安当局の調査結果を引用し、ロシアによる影響工作の可能性を指摘した。また、同社の設立経緯が不透明であることや、民族主義系野党関係者が関与するイベントへの過去のスポンサー活動にも懸念を示した。これに対しロシア政府は、欧州における破壊工作への関与を否定している。
Zondacryptoの創業者であるシルウェステル・スシュク氏は2022年以降行方不明となっており、後任のプレミスワフ・クラル氏はイスラエルに在住し、同国の市民権を保持していることが報じられている。このため、同氏の身柄引き渡しが困難になる可能性がある。
規制を巡る政治的な対立
今回の法案可決は、暗号資産規制をめぐるポーランド国内の政治的な分断を浮き彫りにした。反対勢力を率いるカルル・ナヴロツキ大統領は、これまでの法案に対し拒否権を発動。厳格な規制や高額な罰則が企業を国外に追いやると主張し、代替案として低い罰則と司法監督の強化を提案していた。
一方で、与党「法と正義」党の議員らは、暗号資産関連事業の全面禁止を求める極めて厳格な規制案を提案。消費者保護の観点から、事業活動に刑事罰を科す方針を示した。この案はEU内でも最も厳しい規制の一つとなる見通しだ。
政府が可決した法案では、監督権限をポーランド金融監督庁(KNF)に一本化。同庁は市場乱用に対する罰金のほか、サービスの一時停止や口座凍結、資産の差し押さえなどの権限を与えられる。支持者らは、MiCAとの整合により法的な明確性が確保され、Zondacryptoの破綻を受けた信頼回復につながると期待を寄せる。
大統領の署名が鍵に
今後、同法案の行方はナヴロツキ大統領の署名にかかっている。再び拒否権が発動されれば、ポーランドはEUの要件を満たせず、市場の混乱を招く可能性がある。特に、暗号資産セクターに対する監視が強まる中、規制の遅れは国内外の投資家に大きな影響を与えることになる。