ビットコインのブロックチェーンに「永久保存」される動画
ビットコインは、元来、送金を目的としたシステムだ。しかし、10年以上にわたり、開発者やアーティスト、そしていたずら好きなユーザーたちが、アニメーション画像や動画クリップをブロックチェーン上の取引データに「密輸」してきた。世界中の数万台に及ぶアーカイブノードがそれらをダウンロードし、検証し、ハードドライブに永久に保存している。中には芸術的な作品もあれば、単なる silly(くだらない)コンテンツも多い。その手法は洗練されたものから奇妙なものまで多岐にわたる。
埋め込み方法の多様性
主な手法として、以下のような方法が存在する。
- witness data(証人データ)への埋め込み:単一の取引の witness data 内にファイルをラップする方法。
- transaction output(取引出力)へのピクセル埋め込み:取引出力に画像データを直接埋め込む方法。
- プライベートキーの分割利用:ファイルを奇妙な形式のプライベートキーに分割して埋め込む方法。
- Counterparty などのサードパーティサービス:所有権を示す証明書を発行し、外部ストレージへのリンクをブロックチェーン上で管理する方法。
いずれの手法であっても、共通する特徴は永続性だ。一度、動画クリップやそのメタデータがマイナーによってブロックに確認されると、誰もそれを削除することはできない。以下に、各手法の代表的な事例を紹介する。
事例1:Counterparty による最初の GIF「UFOPEPE」
ビットコインのブロックチェーン上で最初に知られた GIF は、2016年に Counterparty プロトコルを通じて発行された「Rare Pepe」シリーズの一枚、「UFOPEPE」だ。当時、NFT や Ordinals といった概念が存在する前から、Counterparty は任意のデータをビットコイン取引に埋め込むことが可能だった。
UFOPEPE は、全てのデータがオンチェーンに保存されたわけではなく、第三者のストレージサービスへのリンクがブロックチェーン上で所有権と共に転送される仕組みだった。それでも、この GIF はビットコインの歴史に永久に刻まれた最初の動画の一つとなった。画像には、ペペ・ザ・フロッグが UFO に乗る様子が描かれていた。
Rare Pepe ディレクトリのルールでは、最大 1.5MB までのアニメーション GIF が許可されていた。こうして、宇宙人を目指すカエルのアニメーションが、ビットコインの歴史に永遠に残る最初の動画となったのだ。
事例2:Ordinals プロトコルによる「Inscription 2」
2022年12月、Casey Rodarmor 氏が開発した Ordinals プロトコルを通じて、新たな手法で GIF がビットコインのブロックチェーンに埋め込まれた。Inscription 2 と呼ばれるこの GIF は、ブロックチェーン上に完全に保存され、第三者のストレージサービスに依存しない形で公開された。
Ordinals は、ブロックチェーンを解釈する専用ソフトウェアを実行することで、画像をデフォルトでレンダリングする仕組みだ。当初は、公式リリースのソフトウェア(バージョン 0.4.0、2023年1月に公開)でサポートされるコンテンツタイプは HTML、CSS、JavaScript、SVG、MP3、PNG、JPEG のみとされていた。しかし、先駆的なユーザーが GIF の埋め込みを試みたところ、プロトコルはそれを受け入れ、ネットワークはそれをマイニングした。なお、Bitcoin Core ソフトウェアは、デフォルトでは Ordinals を画像としてレンダリングしない。
永続性の裏にある課題
こうした動画や画像の永続性は、ビットコインの分散型ネットワークの強みの一つだが、同時に課題もはらんでいる。例えば、ストレージの肥大化や、いたずら目的のコンテンツの氾濫などが挙げられる。それでも、一部のアーティストや開発者にとっては、作品を永久に保存する手段として注目を集めている。
ビットコインのブロックチェーンは、送金システムとしての役割を超え、今や「デジタルアーカイブ」としての側面も持ち始めているのだ。