光が地球と火星間を移動するのにかかる平均時間は12.5分だ。現在利用可能な推進技術を用いても、両惑星の軌道が最も接近する「火星衝(Mars opposition)」のタイミングでさえ、往復には5〜11ヶ月を要する。

しかし、ブラジル・リオデジャネイロ州立北部大学の宇宙物理学者マルセロ・デ・オリベイラ・ソウザ氏が学術誌『Acta Astronautica』に発表した新研究によると、この旅程を大幅に短縮できる可能性があるという。同氏は小惑星の軌道を分析し、最適化されたルートを算出した。その結果、2031年の火星衝の際には、小惑星2001 CA21の軌道を活用することで、往復わずか153日で火星に到達できる可能性が示された。

小惑星の軌道を活用した最短ルート

ソウザ氏は、地球と火星の両軌道を安定した5度の傾斜角で横断する小惑星2001 CA21の飛行経路に着目。2031年の火星衝では、この小惑星の軌道面を基準としたルートが、2回の往復ミッションに最適な条件を満たすことを発見した。

同研究によると、2031年の火星衝では、地球から火星への移動に33日と56日の2つの経路が存在し、それぞれに対応する帰還ルートを組み合わせることで、合計153日と226日の往復ミッションが可能になるという。

「2031年の火星衝は、小惑星2001 CA21の軌道面制約の下で、特に有利な条件を備えている。これにより、地球から火星への2つの往復経路(33日と56日)と、それに整合する帰還ルートが形成され、合計153日と226日の往復ミッションが可能となる」

実現には依然として多くの課題

ただし、この最短ルートの実現には、推進技術や燃料容量、ペイロードの総質量など、他の多くの要因が影響する。火星までの平均距離は1億4000万マイル(約2億2500万km)で、月までの距離とは桁違いに遠い。有人ミッションでは、帰還までの期間を考慮した安全な滞在方法の確保も不可欠だ。

それでも、この研究は、小惑星の軌道面といった一見些細な要素が、火星への有人ミッションの実現可能性を高める可能性を示唆している。人類初の有人火星着陸が、これまで考えられていたよりも近い未来に実現するかもしれない。

火星の謎に迫る新たな発見

火星に関する研究は今後も進展を続ける。例えば、火星表面に広がる巨大な暗い斑点の正体を巡って科学者たちが頭を悩ませているとの報告もある。

出典: Futurism