反ユダヤ主義暴力、46年ぶりの高水準に
米国における反ユダヤ主義事件の実態をまとめた「反中傷・差別防止同盟(ADL)」の年次報告書が発表された。2025年の物理的暴行件数は1979年以降で最も多く、全体の事件数も過去3番目の水準に達した。
暴行件数の増加と死者の発生
ADLの調査によると、2025年には203件の反ユダヤ主義暴行が確認された。これは前年からわずかに増加し、そのうち32件では凶器が使用された。また、3件の殺人事件が発生し、2019年以来初めて、反ユダヤ主義を動機とした殺人が米国で起きた。
- ワシントンD.C.の首都ユダヤ博物館銃撃事件
- コロラド州でのイスラエル人人質支援集会への火炎瓶攻撃
- ニューヨークにおけるユダヤ人男性への刺傷事件
- ペンシルベニア州知事官邸への放火未遂(知事一家が在宅)
ペンシルベニア州の民主党ジョシュ・シャピロ知事はユダヤ系であり、事件は特に注目を集めた。
世界的な反ユダヤ主義の拡大
米国だけでなく、世界各地でも反ユダヤ主義が深刻化している。欧州では、刺傷事件やシナゴーグへの放火、放火未遂が相次ぎ、各国でテロ対策の強化が進んでいる。ガザ紛争やイラン情勢との関連が指摘されており、紛争激化後には世界全体で反ユダヤ主義事件が34%増加したとの分析もある。
大学キャンパスでの減少傾向
一方で、米国の大学キャンパスでは反ユダヤ主義事件が大幅に減少した。ADLの調査によると、2025年の大学内事件は583件で、前年から66%減少。反イスラエル抗議に関連する事件は83%減少した。
専門家の見解
「潮が引けば、流されない重いものが残る。今回の調査結果は、表面的には減少しているように見えても、反ユダヤ主義が依然として根深く残っていることを示している」
オレン・セガル(ADL上級副社長)
セガル氏は、事件数の減少が必ずしも改善を示すものではなく、反ユダヤ主義が「公の議論やソーシャルメディアで normalization(常態化)されている」と指摘。米国ではユダヤ人が1日平均17回以上の嫌がらせや暴行を受けており、「これは決して大きな進展とは言えない」と述べた。
主要都市における事件の集中
反ユダヤ主義事件は大都市圏に集中しており、ニューヨーク(1,160件、暴行90件)、ロサンゼルス郡(398件)、北ニュージャージーが主なホットスポットとなっている。ニューヨーク市だけで860件の事件が発生し、全国で最も多い集中地となった。
FBIのデータと今後の見通し
FBIの暫定データによると、2025年の反ユダヤ主義 hate crime(ヘイトクライム)は減少したが、全体の hate crime は依然として歴史的な高水準にあり、反ラテン系や反シク教徒の hate crime は過去最高を記録した。犯罪学の専門家であるブライアン・レヴィン氏は、警察からの最終報告が提出されれば、反ユダヤ主義 hate crime の数値が再び上昇する可能性があると警告した。
ADLの調査範囲
ADLの「過激主義センター」がまとめたデータには、人種・宗教・性的指向などを理由とした暴力だけでなく、キャンパスでの言論や嫌がらせも含まれている。ADLは過去に、キャンパスの言論を過大評価しているとの批判を受けてきた。