コレクター市場全体が停滞する中、唯一の明るい話題となっているのが、新車時代には「中古」と見なされていた車両を含む、高性能車の価値上昇だ。イタリアのモデナやドイツのシュトゥットガルト発の高級スポーツカーが注目を集める一方で、米国の主流スポーツカーも再評価されている。
例えば、第6世代(2016~2024年式)のシボレー・カマロは、新車市場でパフォーマンス不足と判断され、早期に生産終了に追い込まれた。しかし、後継モデルが存在しない今、その価値が見直されつつある。一方、第7世代(C7、2014~2019年式)のシボレー・コルベットは後継モデル(C8)が存在するものの、その進化の過程で大きな変貌を遂げた。
多くの自動車愛好家が、新しいパフォーマンスカーに採用される重量過多なハイブリッドやツインターボ、AWDといった技術に対して懐疑的な目を向ける中、C7のバリエーションに注目が集まっている。C7はアナログなドライブ体験を提供しつつも、通気性のあるシートやBluetooth接続といった現代的な快適装備を備えている点が魅力だ。
ただし、LT1エンジンを搭載した Stingray や Grand Sport の価値は過去1年で横ばいとなっている。その一方で、最上級モデルの ZR1 は価値が上昇し、多くの愛好家にとって手の届かない存在となっている。そんな中、特に注目を集めているのが「ビッグ・ナスティ」の愛称で知られる Z06 だ。Z06 は他の C7 モデルと比較して顕著な価値上昇を記録し、600馬力を超える性能を持ちながら、いまだ6桁台の価格で入手可能な数少ないコルベットとなっている。
C7 Z06の誕生背景と技術的特徴
シボレー・コルベットC7、特に Z06 は、同ブランドにとって重要な転換点となったモデルだ。C6世代の高性能モデル(505馬力から638馬力への段階的なパワーアップ)により、エンジニアたちは「Zoraプロトコル」と呼ばれる計画を上層部に提案し、フラッグシップスポーツカーのエンジンを車両中央に移設することを承認させた。しかし、計画が実行に移されるや否や、経済不況が General Motors(GM)の計画に影を落とした。リストラ、ブランドの廃止、予算の大幅削減──。C7の開発はもはや「アメリカンスポーツカーの革新」ではなく、「ポスト不況時代における小規模な愛好家向け車両の存続」という Survival Mission に変わったのだ。
C7の戦略は「合理化」にあった。ZR1や新たな自然吸気V8エンジンの投入は見送られ、2015年式の新型 Z06 が、前世代の ZR1(LS9エンジン、638馬力)の後継として、スーパーカー領域に君臨することとなった。Z06 に搭載された LT4 V8 エンジンには、従来の LS9 と比較して小型(1.7リットル vs 2.3リットル)で高回転型(20,000 rpm 以上 vs 15,000 rpm)のスーパーチャージャーが採用された。これにより、650馬力と650 lb-ft(約881 Nm)のトルクを発生し、デビュー当時は GM史上最もパワフルな市販車となった。