AI監視システムが招いた「地獄のループ」
米コロラド州デンバー南部の高級住宅地、チェリーヒルズビレッジに住むカイル・ダウスマンさん(仮名)は、何の罪も犯していないにもかかわらず、AI監視カメラのシステムによって「地獄のループ」に陥っている。同氏のトラックは、Flock Safety社の自動ナンバープレート読み取りカメラ(ALPR)によって誤認識され、警察の執拗な職務質問の対象となっている。
ダウスマンさんは地元メディア9Newsの取材に対し、「トラックを使うことすらままならない。安全が脅かされている」と語った。「突然、パトカーが現れ、サイレンを鳴らして追跡を開始した」と明かした。
警察も「無実」と認めるが、システムの罠は続く
チェリーヒルズビレッジ警察に取材した9Newsによると、ダウスマンさんに対する職務質問は、同氏のナンバープレートがコロラド犯罪情報センター(CCIC)のデータベースで誤って「逮捕状発行中」と登録されていたことが原因だった。同警察は数回の職務質問でダウスマンさんの無実を確認し、警戒リストから削除したが、周辺地域に設置された多数のALPRカメラにより、州内のどこに行っても職務質問を受ける状況が続いている。
「州内のどこを通っても、カメラが検知するたびにパトカーに通報される。どこに行っても止められる」とダウスマンさんは語った。
データ入力ミスが招いた悲劇
この誤認識の原因は、コロラド州ギルピン郡で発行された逮捕状のデータ入力ミスにあるとみられている。ダウスマンさんがギルピン郡の裁判所に連絡を取り、問題の解決を試みたところ、同裁判所は「誤認識された逮捕状の容疑者名を特定せよ」と要求したが、捜査中の案件であるため、警察は容疑者名の開示を拒否した。
「Flockシステムに登録されてしまったら、それを解除する責任はあなたにある。システムから抜け出すのは簡単ではない」とダウスマンさんは語った。
AI監視社会の負の側面
Flock Safety社のALPRカメラは全米で急速に普及しており、デンバー周辺だけでも数百台が常時稼働している。アラパホー郡(チェリーヒルズビレッジが位置する郡)では、草の根団体「DeFlock」が公開したデータによると、少なくとも283台のALPRカメラが稼働中だという。
ダウスマンさんのケースは、AI監視システムがいかに簡単に人々を冤罪のループに陥れるかを示す象徴的な事例だ。システムの誤認識やデータベースの不備が、無実の市民に長期的な被害を与える可能性がある。
「システムに登録されてしまったら、抜け出すのは非常に困難だ。いつどこで職務質問を受けるか分からない不安と共に生きることになる」
— カイル・ダウスマンさん
今後の展望と課題
ダウスマンさんのトラックは今もFlockシステムに「マーク」されたまま。今後、同氏が仕事や通院などで移動する際には、高額な遅延費用や過剰な警察対応のリスクにさらされる可能性がある。逮捕状の内容が不明なため、警察官の対応が暴力的になることも懸念される。
この事例は、AI監視技術の拡大がもたらす人権侵害のリスクを浮き彫りにしている。米国では、この他にもニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンが、顔認識システムを用いてトランスジェンダーの女性を2年間にわたり監視していたと報じられている。
専門家らは、AI監視システムの透明性向上と、誤認識時の迅速な是正メカニズムの整備を求めている。