米宇宙企業スペースXが近く実施するIPO(新規株式公開)において、CEOのイーロン・マスク氏に「事実上無制限の経営権」を与える計画が明らかになった。同時に株主の訴訟権や経営監視権を大幅に制限する内容で、テスラにおけるマスク氏の巨額報酬を巡る株主訴訟のような事態を防ぐ狙いがある。

ロイター通信によると、スペースXのIPO登録書類の抜粋から、同社が「スーパー投票権株の導入」「強制仲裁条項」「株主提案ルールの厳格化」「テキサス州法の適用」を組み合わせ、マスク氏や関係者に広範な支配権を確保する方針であることが判明した。これにより、投資家は経営陣への異議申し立てや裁判、ガバナンス問題の強制投票を事実上不可能にするという。

ロイターは「この方針は従来の株主保護を前例のない形で損なう」と指摘。また「マスク氏を解任できる唯一の人物はマスク氏本人で、スーパー投票権株を通じて過半数の支配を維持する」と報じた。

テキサス州法の活用で経営権強化

スペースXは本社をテキサス州に移転しており、同州の企業法をIPO計画に反映させる。テキサス州法は株主の権利を制限する傾向が強く、特に経営陣への訴訟や株主提案のハードルを引き上げることで知られる。これにより、マスク氏は外部からの圧力を排除しやすくなる構造が整う。

テスラの前例との違い

2018年にテスラで発生したマスク氏の報酬問題では、株主からの訴訟が報酬額の見直しにつながった。しかし今回のスペースXのIPO計画では、こうした訴訟を未然に防ぐ仕組みが導入される見通しだ。専門家は「投資家の権利が大幅に制限されるリスクがある」と警鐘を鳴らす。

今後の展望と投資家の反応

スペースXはIPOに向けた準備を進めており、具体的な上場時期は未定ながら、早ければ2025年にも実施される可能性が指摘されている。投資家の間では、このような経営権の集中に対する懸念が広がりつつある。一方で、マスク氏のリーダーシップを重視する投資家も少なくないとされる。