セレブも学ぶ「死のドゥーラ」の役割

俳優のニコール・キッドマンが新たな挑戦を始めた。テレビドラマや映画で数千万ドルの報酬を得るトップスターでありながら、彼女が目指すのは「死のドゥーラ」の資格取得だ。この仕事は華やかでもなければ、高収入でもない。しかし、現代社会にとって必要不可欠な存在だと多くの専門家が指摘する。

死のドゥーラ(死の伴走者)は、医療行為を行わず、死を迎える人とその家族を支える。具体的には、葬儀の手配から、最期の時を共に過ごすことまで幅広くサポートする。医療システムの断片化や個人主義の浸透により、最期の時を孤独に過ごす人が増える中、その役割はますます重要になっている。

キッドマンが目指す理由

「母が最期を迎えた時、彼女は孤独でした。家族だけでは限界がありました。姉と私は子供も多く、仕事も忙しく、父もすでに亡くなっていたため、母のケアに追われました。その時、中立的な立場で寄り添い、慰めを提供してくれる人がいたらどんなに良かったかと思いました」

ニコール・キッドマン

セレブだけではない、注目の背景

キッドマンだけではない。映画監督のクロエ・ジャオも、死への恐怖と向き合うために死のドゥーラの資格を取得したと語る。また、ドラマ「ザ・ピット」では、死のドゥーラをモデルとしたキャラクターが登場し、注目を集めた。

死に向き合う専門家によると、セレブがこの職業に関心を持つのは自然な流れだという。現代アメリカ社会では、死をタブー視する傾向が強いが、多くの人が「死」という避けられない現実と向き合おうとし始めている。

「死は誰もが直面する問題です。私たちは長い間、この話題を避けてきました。でも、もう隠す時代ではありません」

アルア・アーサー(Going With Grace代表)

死のドゥーラの具体的な役割とは

人間は常に悲しみや喪失、そして大切な人の最期のケアに支えを必要としてきた。歴史的には、こうした役割は大家族や宗教・文化的な伝統の中で担われてきた。

コール・インペリ(死生学専門家)はこう説明する。

「教会の弔いのコミュニティが、死を迎える人や家族を支えるケアを提供してきました。これは、死の前後を通じて行われるものです」

「影の喪失」にも寄り添う

死のドゥーラは、死そのものだけでなく、離婚、不妊、宗教からの離脱など、人生における深い喪失体験も支援する。インペリはこれを「影の喪失(shadowloss)」と呼び、現代社会で見過ごされがちなケアの必要性を指摘する。

死のドゥーラの活動は、単に医療的な支援を超えた、人間らしいケアの在り方を再定義しつつある。セレブから一般の人々まで、多くの人がこの職業に関心を寄せる中、その役割は今後ますます重要になっていくだろう。

出典: Vox