テザー、知能を新たな準備資産に AI分野へ本格参入
暗号資産(暗号資産)ステーブルコイン最大手のテザー(Tether)は、新たな準備資産として「知能」を位置付けるプロジェクト「QVAC Psy」を発表した。同社はこのプロジェクトを通じて、分散型のローカルAI基盤の構築を目指す。
「心理歴史学」に着想を得たAIモデル群
QVAC Psyは、アイザック・アシモフのSF小説「ファウンデーション」シリーズに登場する「心理歴史学」の概念を基盤としたAIモデル群と位置付けられている。心理歴史学とは、銀河帝国の崩壊後の暗黒時代を短縮するため、数学や統計学、社会動態を用いて大規模な集団行動を予測する架空の科学である。
テザーはこの概念をAI分野に応用し、分散型のローカルAI基盤を構築することを目指す。同社の発表資料によれば、QVAC Psyは「無限安定知能プラットフォーム」や「分散型知能」といったコンセプトを掲げ、中央集権的なAIサービスに対抗するローカルファーストのシステムを目指す。
米ドルから知能へ:テザーの新たな戦略
テザーはこれまで、米ドルに連動するステーブルコイン「USDT」を中心としたビジネスモデルで知られてきた。同社は米ドルの需要を短期国債などの準備資産に変換し、安定的な収益基盤を構築してきた。
しかし今回のQVAC Psyの発表は、テザーが米ドルに依存しない新たな準備資産として「知能」を位置付けることを示している。具体的には、コンピューティング能力、AIモデル、データセット、そして中央集権的なクラウドに依存しないAI実行環境を準備資産として蓄積する戦略だ。
知能を準備資産とするメリット
テザーは、知能を準備資産とすることで、以下のようなメリットを享受できると主張する。
- 所有権とプライバシーの確保:ローカルで実行されるAIモデルは、ユーザーがデータや知識を所有し、プライバシーを保護することができる。
- 継続性とレジリエンス:中央集権的なクラウドサービスに依存しないため、サービスの停止や政策変更、価格変動などのリスクを軽減できる。
- 低レイテンシー:ユーザーの近くでAIを実行することで、応答速度を向上させることができる。
一方で、中央集権的なクラウドサービスと比較して、ローカルAIは最先端の能力において劣る可能性があるというトレードオフも存在する。しかしテザーは、このトレードオフを「暗号資産の世界で見られるような、分散化と所有権の確保という価値観とのバランス」と位置付けている。
テザーのビジョン:プライベートデジタルインフラの構築
QVAC Psyの発表は、テザーが米ドル流動性の発行者から、プライベートデジタルインフラの構築者へとそのビジョンを拡大していることを示す。同社はこれまで、米ドル準備資産を中心に、ビットコイン、ゴールド、スタートアップ、エネルギー、マイニング、通信、その他インフラ分野への投資を拡大してきた。
今回のAI分野への参入は、テザーが「知能」を新たな準備資産として位置付け、分散型のローカルAI基盤を構築することで、ユーザーのデータや知識の所有権を確保し、プライバシーを保護することを目指す戦略の一環だ。
今後の展望と課題
QVAC Psyの具体的な実装方法や、テザーがどのように知能を準備資産として蓄積していくのかはまだ明らかにされていない。しかし、同社がこれまでに示してきたビットコインやその他資産への投資戦略を踏まえると、知能分野への投資も戦略的に進められていくことが予想される。
一方で、AI分野における競争は激化しており、テザーがどのように差別化を図っていくのかが注目される。また、ローカルAIの実用性や性能面での課題も依然として残されている。
「知能は、テザーにとって米ドルと同様の準備資産となる。中央集権的なクラウドに依存しないローカルAI基盤を構築することで、ユーザーのデータや知識の所有権を確保し、プライバシーを保護することが可能になる。」
— テザー公式発表資料より